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兎と獅子の話 ページ2






夜でも賑わうゲームセンター。
そこでよく見知った、制服にジャージを羽織った派手髪の後ろ姿を見つける。

「おい獅子田」

「ヒッ、!じゅーとじゃん!やだやだ、帰らない〜!」

俺を見て座っていたゲーム機の前から逃げる、が。

「捕まえた。」

「はーやーいーよお〜。
ウサギが早いのは逃げ足じゃないの〜?」

どこか間延びした今どきの、いわゆる"jk"という言葉がぴったりな彼女は、家庭の事情からよく家出をして、その度俺に補導されている。
まあ実際は補導と言う名の愚痴を聞く会だったり慰める会だったりするが。

「おま、おちょくってんじゃねえよ。ほら、帰んぞ」

「やーだあー!」

窘めるように視線をやるとはあ、と大きくため息をついて「最後にこれだけやらして、」と彼女のお気に入りのゲーム機を指さし上目遣いで頼んでくる。俺はこの顔にすこぶる弱い。

「……仕方ありませんね、1回だけですよ。」

「やっっった!じゅーとさんすき!」

はしゃぐなはしたない、と窘めはするものの、満更でもないような気になってしまい前髪を搔き上げて誤魔化した。

数分してゲームが終わると、そばの柱に寄りかかって待つ俺の元に大人しくやってくる。

「終わったよー…」

「ん。帰れるか?」

"今日は"というのを省略したこの質問に、彼女の顔が曇る。いつもはこのままえっと…と返答を濁す彼女が、今日ははっきりとした口調でこう言った。

「……き、今日は、!帰ろうかな。」

「…………え?本気か?大丈夫なのか?」

思わず車まで歩く足を止めて振り返る。

「うん、だって、もしかしたら大丈夫かもしれないし!」

頑張る!と意気込んで握る拳は震えていた。

「…もしだめだったらすぐ連絡しろよ」

「うん。」

いい返事だと頭を撫でてやると、えへへなんて笑う。いつの間にか強く握られていた拳は緩く開かれていた。



彼女を家まで送り届け、別れる時にもう一度頭を撫でてやってからもう1時間が経とうとしていた。
連絡はないかと数分に1回スマホを確認している自覚はある。署に戻って来たものの仕事に何一つ手をつけられない。ああ心配だ、
その時スマホの着信音が鳴る。

「っ、もしもし、!」

・→←他の男の匂い



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作者名:笹倉 | 作成日時:2019年6月16日 0時

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