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「今日は祝勝会だな!哲も河井も帰んなよ?」
祝勝会という言い方が
野球部らしいというかなんというか。
人一倍騒ぐ伊佐敷に苦笑いする。
そしてふと部員たちに目線を向けると、
その中にポツンと1人だけ立ちすくむ姿が見えた。
( …一也 )
私と目線が合ったのに気付いた一也は
無理やり感のある笑顔をこっちに向けながら
すぐ目線を外して、その場から去っていく。
私はどんな表情をしていいかわからなかった。
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「失礼しまーす。あ、Aさん、この前のスコアあります?」
時は経ち放課後。
学校でも散々冷やかされまくった私は
身も心も疲れきっていて、
貴子に心配された結果、部活中はマネ室で
休憩を兼ねて雑用をこなしていた。
そんな時、練習が終わったのか
いつものように一也が敬語で入ってきた。
「あーっと、どこだっけ…あった、はい」
「あざす」
今日はマネ室に入ってきてもタメ口にならない一也。
そのままなにを話すでもなく、
近くの椅子に座ってスコアを眺める一也に
なんとなく「ねぇ」と声をかけてみた。
「なんすか?」
「い、いや…こんなの私から聞くのも変だけど、
なんでずっと敬語なのかなあって」
「……先輩の彼女に馴れ馴れしくできませんよ」
そう言って柔らかく笑った一也だが
目の奥は少しも笑っていない。
「ごめんね。…っていうのも違うか」
「何言ってんすか」
「なんて言っていいのか、わかんなくて」
ブツブツ呟きながら俯く私を見て
「…あのねぇ」と呆れたように一也は言った。
「俺、別にショック受けたりしてませんから」
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作者名:志季 | 作成日時:2018年12月2日 0時