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「もう帰んの?Aちゃん」

「もうって…いい時間だしそろそろ帰んないと」

「じゃなくて、哲さんと一緒に?」




腕時計を確認して言う私の制服の裾を
引っ張る力が強くなった。

少し複雑そうな目をする一也。

あれだけ好意を寄せられていれば、
その原因もまあわからないわけがないけど。




「家近いから送ってくれてるの。
ただそれだけだよ。そんな顔しないで」

「…いつもそうしてたの?」

「うん、まぁ毎日ではないけど…ね?」

「ああ」




なんだこの状況は。

バッグを持って帰ろうとする私の裾を
離そうとしない一也と、
その光景をいつもの真顔で見つめる結城。

とりあえず優しく宥めてあげると、
「そっか」と納得してくれたようで
やっと離してくれた。




「また明日、話そ」

「…うん。じゃーねAちゃん。
哲さん、お疲れ様でした」

「ああ。寮まで気をつけて戻れよ」




まだどこか寂しそうな顔をする一也に
なぜか私の心が痛んだが、
マネ室をあとにしてグラウンドも出る。

たわいもない会話をしながらしばらく歩いていると、
向かいから「あっ!」と懐かしい声。




「Aー!!…と、結城!?」




嬉しそうな表情をしたあと
すぐ驚きの表情に変わった目の前の人物は、
中学時代の友人 __ 香乃だった。



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作者名:志季 | 作成日時:2018年12月2日 0時

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