人”じゃない”と無理なこと ページ29
『辞めます』
あの誕生会が過ぎ去って、僕は突然に、当主様にそう告げた。
はじめは驚いてしきりに理由を聞いて来たが、最後は何も言わず、いつでも帰ってきていいからなと僕を送り出してくださった。
あの兄弟に会うと、最後の最後で決断しきれないような気がしたから、出ていくのは夜にする。
その日は荷物を持つには面倒な大雨だった。
外套を羽織り、少なめの荷物を持って扉を開けた。
「待って」
不意に声が聞こえた。
焦って振り返ると、そこにいたのはガイアだった。
『っ...もう寝ないとでしょう? お部屋に戻りなさい』
「その、また怖い夢を見て...どこに行くの?」
『その、少し遠出の仕事でして。夜のうちに出ないと間に合わないのですよ』
「...嘘だよ」
ズボンの裾を押さえて訴えてくる。
「部屋に行ったら、何も残ってなかったよ? ...帰って来るの?」
『貴方って人は...本当に賢いですね』
荷物を降ろし、弟様と同じ目線までしゃがみ込んだ。
『今はもう使用人ではないので、したいことをしますね』
温もりを求めるようにガイアを抱き寄せた。
この感覚を体に染みつかせるように。
『本当は...ずっとここにいたいけど。でも、自分から離れないと耐えられないから』
『人を信じられなくなった僕にもう一度温かさをくれたから、もうそれで充分だよ』
ガイアを離し、荷物を持って背を向ける。
『ここはモンドだ。風が吹く限り、どこかで繋がっている筈だから』
そう言い残し、扉を開けて外に出た。振り返らず歩みを進める。
このブローチが手元に戻ってきたということは、そういう事なんだろう。
あいた鞄の隙間から覗く木箱を見ながらそう思った。
人は自分勝手だ。ちょっとしたことで信じ込んで勝手に裏切られたと叫ぶ。
どんなに優しい人も僕より早く死ぬ。
入れ込まない方がいいのだ。...共存なんてはなっから無理なんだから。
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ぽんぴー - 数少ない原神BLありがたやありがたや。。そして面白いです。更新がんばってください!!!!! (2022年7月27日 2時) (レス) @page14 id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎのくろた | 作成日時:2022年7月26日 0時