【銀魂】会者定離【短編集】 (ページ3)

今日:11 hit、昨日:4 hit、合計:12,281 hit

3. ページ3

「バカ兄貴を殺しにきたアル。」

そう言って、神威にそっくりの髪色と目の色をした神楽という妹が私と阿伏兎の目の前に立っていた。

地球を出る前、阿伏兎に甘味を買いたいと、わがままを言ってしまったからだろうか、とてもめんどくさい事に巻き込まれてしまった。

「…阿伏兎、どうする？」
「この嬢ちゃん、理性ぶっ飛ぶと俺らがやられないこともないからなぁ…」

私も阿伏兎の意見に賛成だった。以前吉原で彼女と戦い、身をもって夜兎の強さを知っている阿伏兎とは違うが、団長である神威の妹など殺したくない。

ましてや、手が届くことはないのだろうが、仮にも好きな人の妹を殺すなど。できるとは思えない。

夜兎なのに、何故。そんなに甘いのか、と昔鳳仙に言われたことがある。私のこの甘さは生まれつきなのだ。夜兎だからといって関係ない。

「阿伏兎、3、2の2で走ろう。」

コクリとうなずいた阿伏兎を確認した時にはもう遅かった。神楽の仲間でもないのだろう、見知らぬ男が私の方を貫いていた。

「A！」

阿伏兎の叫び声にその男の腕をへし折り、自分の肩から手を抜く。大量出血で死ぬもの時間の問題かもしれない。

走り出した私に阿伏兎は方を貸してくれる。そうして私たちを呆然と見つめる神楽と手を抑え、暴れまわる男を後ろ目に宇宙船まで逃げてきたのだ。

布団にもう一度潜り込んで多分もう動かないのであろう右手を見つめる。

夜兎としての誇りなんてものは持ち合わせていなかった。だけれども夜兎であることだけが、自分と神威をつなぐ唯一の糧だったのに。

動かない右手を必死に握り締めようとするが、意思とは反対に全く右手が動く気配はない。

ー動け！動け！動け！ー

キリキリと痛む右手に巻かれた包帯からはもうすでに血がにじみ出ている。

ー動け！ー

ぎゅっと目をつぶった時、パシリと誰かに左手を掴まれる。