101.裸の大将 ページ5
近藤の叫び声に何事か、と土方は「近藤さん!どうしたんだ!」と叫びながら扉の前で腰を抜かしている近藤のそばに駆け寄る。
「Aちゃんが…Aちゃんが…」
青白い顔で何度も何度もAの名前を連呼する近藤。土方は近藤の背中に手を当て、落ち着くようにさする。総悟は扉に近寄っていく。
「待て!総悟…「おい、Aー。」
近藤が止めるよりも早く総悟は躊躇いもせず、そして無遠慮にAを呼びながら扉を空けてしまう。だけれども。
総悟は目を丸くした。近藤が一体なにを見てAを呼んだのか分からなかった。
総悟の目の前にはまさしく将軍様が、将軍様の将軍様の化身とも言われる息子をおっ広げで、裸体で立っていたからだった。
「しょ、しょーぐんさま?」
近藤は涙目になりながら総悟の目の前に立っている紛れもない将軍様を情けない声で呼んだ。将軍様は顔色を一つも変えることなく、総悟の合間を縫って駆け出して店を出て行ってしまう。
「え⁉将軍様⁉」
「お待ちください、将軍様!」
土方が思わずタバコを噛み切ってしまい、その苦味で咳き込んでいる。近藤は腰が抜けたのか立てない。
総悟は…
「なにしてやがる、A。」
「なにって、仕事だ。」
「銀ちゃんに頼まれたんだ。」と銀時の腕の中でAは銀時を指差しながら言った。おそらく総悟にはその光景だけでなにがどうなってAがここにいるのか理解できたし、近藤さんが腰を抜かした理由も分かった。
「旦那ぁ、困りますぜ、うちの大切な隊士をこんなことに使ってもらっちゃあ…」
「言ってる場合か!早く将軍様追いかけろよ!」
横からすごい足音を立てて、新八、神楽、お妙、その他もろもろが将軍様の後を追う。銀時はAからそっと腕を外してじり…と一歩後ろへ下がる。
近藤の叫び声が聞こえた時、一早くAを隠そうと動いたのは銀時で、とりあえず首根っこを腕で掴み、どこへ隠そう、と迷っている間に将軍様は裸体で扉の方へ向かうし、扉は沖田の手によって開かれてしまう。
運が悪い、悪すぎる。
「沖田くーん…ちょっとした冗談だろ?」
「冗談ってのが冗談だろ?旦那ぁ。」
その夜、歌舞伎町では真選組と将軍様の追いかけっこのため、砲弾の音が鳴りやまず、その片隅で誰かの叫び声が一瞬だけ鳴り響いた。
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咲(プロフ) - 玲奈さん» すごくそのお言葉嬉しいです…ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします! (2020年5月10日 10時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
玲奈 - ずっと求めていたものがまさにコレ!って感じで凄いおもしいです!更新楽しみに待っています! (2020年5月10日 3時) (レス) id: 4d2b01f996 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます。頑張って書いていきます。よろしくお願いします! (2020年5月9日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - シリアスすごいいいです!これからの展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月9日 9時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 紅蓮さん» ありがとうございます。ゆっくりだとは思いますが、最後まで見てくださると光栄です。よろしくお願いします! (2020年5月8日 12時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2020年1月29日 23時