89. ページ28
静まり返ったグラウンドに、たった1人ポツンと立っていた。
さっきまであんなに大きな歓声がグラウンドを包んでいたのに、それが嘘みたいにひっそりしてて、怖い。
佇んだ私の肩をポンと叩いたのは幸子だった。
幸 「帰ろう、A…。みんな待ってるよ。」
幸子でさえ、目にいっぱい涙をためて、泣くのを我慢している。そう言えばぼやぁっと貴子先輩が、泣き崩れているのを近くで見た気がする。
泣きそうな幸子とは裏腹に私の目にはやっぱり涙なんて溜まっていなくて。我慢せずとも涙が溢れて来ることもなかった。
からからに乾いた私の目と喉に、ヒュッと風がふいて通り過ぎた。
いつの間にか手を引かれてなすがままに引っ張られていく私は5対4と大きく表示されたパネルを最後に見た。
グスッと鼻をすすり出した幸子の背中をぼーっと見て、つま先に視線を落とした。
なぜか、泣けない自分が恥ずかしかった。
貴 「チーム全員の思いが詰まっています。頑張ってください…甲子園……。」
いつの間にかマネージャーみんなと合流して、稲実のキャプテン原田さんに折り鶴を渡す貴子先輩。
その様子さえ、まるで漫画の中でおこなわれているような感覚で私には関係のないように感じていた。
成 「A…」
ふっと名前を呼ばれて振り返ってみれば成宮。いつもちゃらんぽらんな顔して私にべったりくっついて来るのに、なぜだか今日は真面目で。大真面目で。
「成宮…」
成 「一也、一也頼んだよ。」
意味深な言葉を残されて訳のわからないまま、背中を向けた成宮。御幸が一体どうしたというのだろうか。
それに敵チームに心配される御幸って?
ようやく自分で動いて首をかしげた私に幸子は「帰るよ。」と声をかけた。もうバスが待っている。
駆け出した私には成宮が勝ったにも関わらず、悲しそうな顔をしていたことは分からなかった。
147人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーちゃん(プロフ) - 105話、成瀬が倒れた(?)過程がないので、ちょっと分かりにくいです(・・;) (2023年1月20日 23時) (レス) @page44 id: 5c50c73791 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 (2019年7月7日 21時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - 咲さん» 続編おめでとうございます!これからも見ます。頑張ってください! (2019年7月7日 20時) (レス) id: e2e58e1092 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - 咲さん» 今回も面白かったです!御幸と主人公ちゃん、いつかくっついてほしいですねぇ…これからも頑張ってください! (2019年7月5日 21時) (レス) id: e2e58e1092 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 豪炎寺修也推しさん» ありがとうございます!返信ゆっくりですが、是非続けてみてくださると嬉しいです! (2019年6月29日 20時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2016年9月16日 17時