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「やっぱ稲実か…。」
ぽとりとこぼした言葉を拾ってくれる人は誰もいなくて、ただの独り言のようにわぁー!と歓声が飛び交う球場に消えた。
たった今試合が終わったところだ。残すところは青道と稲実の決勝戦。やっと…ってところだ。
御 「A、俺と沢村と小湊、トイレ行ってくっから。」
「あ、待ってそれなら私も行く。」
「ごめん春乃ちゃん、バス先に行ってて。」と伝えれば、「女なのに男と連れションかよ…。」なんていう御幸を無視しながらトイレに足を進めた。
しょうがない。方向オンチらしいのだ。私は認めていないのだが。
相変わらずでっかい声でトイレを探す沢村君とそれをなだめる春市君。御幸と私も若干ため息をつきながらその2人の後に続いて歩いていた。
沢 「あったどー!トイレあったどー!」
さっきとは比にならないくらいでかい声で叫ぶ沢村君にあちゃーと頭を抱える私と「お前らすぐ迷子になるから(笑)」と何にもないようにけたけた笑う御幸。
恥ずかしくないのか…。
沢 「るせー!!いつも一言多いんだよ!」
春 「タメ口タメ口!」
トイレに入りながらデジャヴな感じを繰り広げながら消えていく2人。
「あれ?御幸は?トイレ、行かなくていーの?」
トイレの前で立つ御幸にそう尋ねれば、「ああ、あいつらの付き添いだったから。」という御幸。…なんというか、お母さんって感じだ。
「じゃ、ちょっと私も行ってくるから…。」
ああ、女子力負けてるなんて今更なことを思いながらもトイレに足を運ぶ。いつもなら女子トイレの方が並ぶのだが、今日は選手が多いせいか、男子の方が並んでいる。
すすーっと進むことができ、すぐにトイレから出ることができた。
それでも3人が待っているだろうと少し急ぎながら手を乾かし、外に出てみると
「え。」
そこには想像した3人の姿ではなく、稲実5人に囲まれた御幸の姿。そこにはもちろん、見覚えのある白い頭。
「げっ、」と声を出した時は遅かった。「あー!A!」とでかい声で叫ぶように抱きついてきた成宮に「はいはい。」と適当にあしらう。
「何話してたの?」
御 「ん?このメンバーで揃うの久しぶりだって。」
「ああ…。」
そういえば高校に入る前、そんなことがあった。もちろん私もここにいたわけなんだけど、御幸が来た途端一足先に帰ったのだ。
ーで、あの気持ちも置いてきた…ー
あの日、決意した気持ちはまだ忘れてない。
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あーちゃん(プロフ) - 105話、成瀬が倒れた(?)過程がないので、ちょっと分かりにくいです(・・;) (2023年1月20日 23時) (レス) @page44 id: 5c50c73791 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 (2019年7月7日 21時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - 咲さん» 続編おめでとうございます!これからも見ます。頑張ってください! (2019年7月7日 20時) (レス) id: e2e58e1092 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - 咲さん» 今回も面白かったです!御幸と主人公ちゃん、いつかくっついてほしいですねぇ…これからも頑張ってください! (2019年7月5日 21時) (レス) id: e2e58e1092 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 豪炎寺修也推しさん» ありがとうございます!返信ゆっくりですが、是非続けてみてくださると嬉しいです! (2019年6月29日 20時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2016年9月16日 17時