111.意気自如 ページ15
「意外か?」
ゆらゆら揺れるタバコの煙を見つめながら土方さんは私にそう尋ねた。土方さんが冗談を言うことは別に意外でもない気がするけれど、種類にもよる気がする。こういう恋愛の話は私と同じようにあまりしないと思っていたからだ。
「恋愛面では、意外でした。土方さんってそういうこと興味ないっていうか…うとそうだし。」
「…お前よりかはマシだと思うぞ。」
「そんな!同レベルくらいですよ!土方さん好きな人いたことないですよね?これまで。」
「じゃないとこんな年までこんなイケメンが残ってるなんて誰も思いませんよ。」と笑って言うけれども、土方さんは眉間に皺を寄せて。何か言いたそうに、でもいう必要もないか、という顔でタバコの煙をはいた。
私は確かに恋愛面ではポンコツだろうけれども、それ以外、誰かの心情を読むことは意外に長けている。これはおそらく育った環境もあるからだと思う。人一倍親に気を使ってきた私はどんなに苦しい時でも、悲しい時でもあまり感情を出さないようにふるまってきた。元気なフリなどお手の物だ。
だけれども私が元気にふるまえばふるまうほど両親、特に母親は陰で泣きそうになっていたことを私は知っている。だけれどもあの時の、あの、母親の泣き崩れる姿がどうしても目に焼き付いてはなれなかった、忘れられなかったのだ。幼かった私には。
気になった土方さんの態度に黙っていようかとも思ったが、聞いてみるのはただである。答えてくれなければそれでいい。
「…土方さん好きな人いるんですね?」
「………さぁな。」
「いるって言ってるようなもんですよ、それ。誰ですか?」
「知らね。」
「ずるいやつ。」とつぶやいたけれども、土方さんは笑って私の頭を撫でただけだった。そんなに年も変わらない、いやむしろほとんど同じなのに、子供をあやすような触れ方。私もふっ、と笑う。
そよそよと涼しい風が吹く。もう冬だというのに先ほどの寒さとは打って変わって太陽が出てきたからか、暖かい。土方さんはおもむろに立ち上がると、「答え出てるんじゃねぇか?」と私に向き直ってそういった。
「俺の話聞いても特に悲しくもなかっただろ?」
「それは…」
恋心が分かってないから、と言いたかったけれど、確かに悲しさなんてこれっぽっちもこみあげてきてないことに私は気が付いていた。
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2021年2月1日 20時