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思い出【土方十四郎】1 ページ23

私には忘れてはならない思い出がある。

そう、苦くて、苦しい思い出ー




「いいんですか!?」

大きく声を上げた私に優しくミツバさんは右手をつかんだ。

ミ 「いいのよ、Aちゃん。あの人の負担だけにはなりたくないもの。」

笑いながらそう私にミツバさんは告げるけどそれが逆に私には苦しく息をしているようにしか見えなくて。

私はその時は大きなあの背中を追わなかったーいや、追えなかった。



土 「...なんでてめぇがこんなところにいやがる。」

「江戸に出できたの。あそこには何もないから。...ミツバ姉も死んだし。」

その人と目を合わせることもなく私は自分の右手をぎゅっと握りながら強く言い放った。正直この人には会いたくなかった。

「私、総悟を呼んだんだけど。」

土 「あいにくあいつは本当に珍しく仕事だ。」

「...近藤さんは。」

土 「そうやすやす正体の知らねぇ相手に局長を会わせるわけねぇだろうが。」

ふうーとたばこを吐き出したその人に私はため息をついた。ここに来たら必ず沖田君はいるよと銀髪の頭に言われたというのにまさかいないなんて。

なんて私はついていないのだろう。

「帰る。」と一言残し、踵を返そうとするけれどもどうにもこうにもその人は私をイライラさせるのが得意みたいで。

土 「総悟待ってたんだろ。上がってけよ。どうせ時間はあるんだろ?」

「私が働いてないとでも…?」

土 「違うのか?」

「今日が休みなだけだよ!馬鹿野郎!」

「お邪魔します!」とキレながらもきちんと挨拶はしながらびくつく隊士の後ろについていく。

部屋に通してくれるらしい。

どすどすと音を立てながら歩く私は昔とは随分変わったと自分でも思う。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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