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沖 「よぉ…。」

俺は1人たちながらそいつに小さな声で声をかけた。

ーいや、正しくは墓に声をかけた。

もちろん返事をしてくれるはずもなく、ほんの少し冬に近づいた季節の風が冷たく俺の髪を揺らしながら吹いているだけだった。

俺は墓の前にどさりと腰を下ろしながらじっとその小さな汚らしい墓を見つめた。

沖 「相変わらず、お似合いでぃ…。」

ふっと笑いながらそう告げた言葉には俺の本音が混じっていた。小さな頃からこいつはずっとこんな感じだ。

沖 「俺は、約束守れたかねぃ?」

ポツリポツリと出てきた言葉に俺は自分でもびっくりした。こいつの前でこんなに喋ることはないのに。ましてや2人きりなんて。

2人きりで話したのなんていつぶりだろうか。

ああ、そうだ、確か最後に2人だけで話をしたのは、

ー8年前か…ー

ゆっくりゆっくり思い出されるのはあの日、あの約束を交わした日。俺があいつの名前を呼ばなくなった日。俺があいつの顔を見れなくなった日。


「秘密にして!」

必死な顔でそう頼まれのは記憶に新しい。

「お願い!誰も知らないの!私、私…自分でなんとかするから…。」

今にも消え入りそうな声で俺の手をぎゅっと握りながらそう告げたそいつに俺は返事をすることもできなくて。

だから、小さな頭で必死に考えた。

なんとかこいつを助けることはできないかと。

でもそいつは俺の必死の考えも全て台無しにするかのようにこう告げた。

「もし言ったら私、総悟と友達やめる。幼馴染やめる。」

聞いたこともない強い口調で俺をきっと睨みながらそいつは脅迫とも取れる言葉で俺にそう言った。

俺はその言葉に、目に、頷くことしかできなかった。


でも、今になって後悔するなんて。

ーらしくねぇ…ー

全部、全部お前のためにやったことだった。

あの約束を守るために小さな頃は顔に気持ちが出やすかった俺は必死でそいつの顔を見ることをやめた。

泣きそうになるから。

あいつの名前を呼ぶのもあいつの話題を出すのもやめて、あいつに冷たく当たるようにした。

嫌いにならないと引き止めてしまいそうだから。

それくらいずっと俺はあいつとの約束を守るために必死だった。

沖 「おめぇ、ずりぃよな…。」

そう告げる俺に冷たい雨が当たり出した。もう、無理することもない。


でも、帰ってくることもない。


冷たい雨が頬を濡らす。それと同時に落ちた涙はきっと誰も知らないのだろう。

俺がAを好きだったことも。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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