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涙【沖田総悟】1 ページ3

前に涙を流したのはいつだっただろうか。



ぱちり、と目を覚ますといつもと代わり映えのない天井の木目が目に入る。

「…。」

今日はなんだか体がだるい。重くて、何かに取り憑かれているかのように自分の動きがとてもゆっくりに感じる。

夢の内容は全く覚えていなかった。いつもは鮮明に覚えているはずなのに。

布団に座ったまま、しばらくぼーっとしていればなんの音沙汰もなく開けられる襖。

土 「起きてたのか。朝飯、できてるぞ。」

なかなか部屋から姿を表さない私を心配してくれたのだろうか。土方さんはいつもと変わらない態度で私にそう、呼びかけた。

「…。」

ゆっくり立ち上がると少しよろける体。それでも倒れることはなく、待ってくれている土方さんの背中を追う。

彼はいつも足早だ。そして今日もそれは変わらない。


近 「おお、Aちゃん。おはよう。今日は遅かったな!みんな心配してたぞ。」

食堂に入るやいなや、大きな声で私と土方さんをみると声をかけてくれる近藤さん。

彼の態度も依然、いつもと変わらない。

近 「今日はなんだかだるそうだなぁ。でも今日は休暇を取るつもりだっただろう?確か。ゆっくり休んでこい!」

「俺はもちろん今日もお妙さんの護衛だ!」と張り切る彼は朝食のカレーを食べ終えると笑いながら食堂を出ていった。

「…。」

カタンと音を立てながら、みんなより離れたところに座り、少なめのカレーに手をつける。

味も見た目もこれもまたいつもと変わらない。


山 「Aちゃん、おはよう。」

のろりのろりといつもより遅いスペースで食べる私に男の人にしては少し高めの声で挨拶をしてくれるのは山崎さんだ。

そしてその高めの声も今日も変わらない。

「…。」

彼は私の横に腰掛けると、「最近、たまさんが冷たいんだよね。なんだか俺のこと避けてるみたいで。」といいながらカレーに手をつけた。

たまさんと呼ばれる女性の態度が冷たくなったのもこれまた私にとってはいつもと変わらないことだ。

いや、山崎さん以外にとってはいつもと変わらないものだ。一度お見合いをしたらしいが、その日以降から彼はいつも、なんだか最近たまさんが冷たいとぼやき出す。

つまり、これもまたいつもと変わらない会話なのだ。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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