【銀魂】一樹之陰【短編集】 (ページ15)

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ケーキ【神威】1 ページ15

神威side

「お誕生日おめでとう。」

キョトンと丸い目をして立っている俺の目の前には、いちごののったショートケーキをホールごと差し出すA。

そういえば今日は6月1日だっけか。

神「ありがとネ。」

一言そう返せば、表情は変わらないものの、嬉しそうに「うん。」と頷いたA。可愛い。

思えば誕生日ケーキをもらうというか、誕生日を祝ってもらうのなんて、何年ぶりだろうか。もう思い出せないくらいの昔の様な気がしてならない。

まだ自分は18であるというのに。

Aはワクワクとしながらおれがケーキを食べるのを待っているみたいだった。

普段の俺なら、ケーキくらい、その場でパクリだけど、今回は勝手が違う。〝Aが買ってきてくれたケーキ〟だ。

そんなに簡単に何も思わないで食べることなんてできない。

神「後で、ゆっくり食べるネ。」

俺はにっこり笑ってそう言ったけど、Aは分かりやすく肩を落とした。俺がすぐ食べるとふんでいたんだろう。

「ケーキ、嫌いだった？それ。地球では、しょおとけえきって言うんだって。」

「ちょこれーとケーキの方がよかったかな…。」と少しシュンとしてぎこちなく地球で聞いたケーキを連発して、そう呟くA。

普段顔の表情は全く変わらないAで、よく色んな人から誤解されやすいが、これほど分かりやすい子なんているだろうか。

そんなことを考えながら俺はくつくつと笑った。俺が笑っている意味が分からないみたいで、Aは首をかしげた。

が、なぜか何かに気づいたというような顔をしたかと思うと、あせあせとしだした。相変わらず表情は変わらないが。

「ちょ、ちょこのがよかったか…。」

手をアワアワと動かしながら笑う俺に「ご、ごめんね。神威が、しょおとけえきを食べてるの見たことなかったから。」といつもより少し早口で話す。

「食べて見て欲しくて。」

そういうとまたシュンとした。嬉しそうだったり、シュンとしたり、ハッとしたり、忙しい奴だ。