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神 「本当は今すぐにでも食べたいヨ。」
落ち込むAに俺はコツ、と一歩近づきながらそう言った。
「?じゃあた 神 「でも、」
神 「でも、残しておきたいんだヨ。」
ぐいっとAを引き寄せて、しっかりとAの目を見て言った。
相変わらずこういうところは鈍感なのか、Aも俺から目をそらすことはなく、「なんで?腐るよ?」と純粋無垢な目で返した。
神 「好きなものってさ、早く食べたいけど、残しておきたい気持ちもない?」
「…それは、あるかも…。」
少し俺より背の低いAは俺を見上げながら静かにそう呟いた。俺を見上げたせいか、俺が距離を詰めたせいか、先程よりずっと顔がはっきり見える。
神 「でしょ?」
ニコッと笑って俺はAのおでこにコツンと自分のおでこをぶつけた。
それでもいつもと同じで動じず、Aは不思議そうに「神威?」と呟いた。
「ケーキ、腐らない日までには食べてね。」
おでこをぶつけたまま、Aはいつもとは違う笑顔を見せて、俺にそう言った。
一瞬理性が飛びそうになるけど、そんな振りは見せずに、「うん。」とにこりと笑って、おでこをはなした。
神 「じゃあ、仕事しっかりネ。」
「うん、神威も。阿伏兎が死にそうにしてたよ。」
「余計なお世話だヨ。」と言いながら俺はくるりとAに背を向けた。
神 「よかった…とってられて。」
そんなつぶやきはきっとAには聞こえていないんだろう。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年1月16日 1時