しおり【沖田総悟】1 ページ1
「しおり？」
沖 「ああ、しらねぇか？」
洗濯物を干す私に総悟は珍しいことを言う。しおりだと。このドS王子から。
「あんた、本なんて読むわけ？」
沖 「んなもん、読むにきまってんだろぃ。いつも読んでるの見てるじゃねーか。ほらあれだよあれ。上手になる暗殺の仕方。」
「知らねーよ。」
「あんた、そんなもん読んでんの？我が幼馴染ながらあんたのことはまだよくわからんわ。」と呆れながら背中で返事をする。
全く、いつからこうなってしまったのだろうか。思い返せば、まだ小さな頃は可愛かった気がする。姉上、姉上と駄々をこねていた総悟が懐かしい。
ひねくれの片鱗を見せ始めたのは近藤さんにあって、道場に通うようになった頃からだろうか。
もしもあの近藤親子がこのドS王子という作品を作り上げてしまったのなら、いくら近藤さんでも私は処す。
だが、思い返してみてもあの時から生意気になったのは確かなのだが、近藤さんたちがそんな風に教えるわけない。
ならばこいつの元々のポテンシャルだったのだろう。こうなる運命だったのだ。諦めるしかない。
くるりと後ろを振り向いてみれば、縁側に腰掛け、静かに座っている総悟。
こうみれば確かに絵にはなる。
ーでも私は感覚狂っちゃったからなぁ…ー
幼い頃から総悟と土方さんたちといたからだろうか。顔面偏差値については私はあんまりそんな風に思ってはいなかったけれど、男の査定のラインがどうも高いらしい。
こう言っちゃなんだけど、容姿が整ってないわけではない。むしろいい方だし、家事だって、料理だってできるし、おしゃれもそれなりに分かってる。
性格がひん曲がってるわけでもない。
なのに…
ーいい男、引っかからないなぁ…ー
ため息をつきながら総悟の隣に座る。少し首をかしげながら不思議そうに「なんでぃ、ため息なんかつきやがって。気持ち悪りぃ。」と失礼なことを言うこの男。
「…失礼ダネ。ソウゴクンノセイデコウナッテルノニ。」
まあ、これもあながち嘘ではない。幼い頃から一緒にいる私たちは二人でいることが板に付いちゃっている。
もちろん江戸に来てもそれが変わることはなかった。だからだろうか、こんなにも男が寄ってこないのは。
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作者名：咲 | 作成日時：2017年1月16日 1時
