25.かみは死んだ ページ27
「これ…。」
おずおずと差し出されたそれに新八は目がくらみそうだった。
最近の万事屋は真選組のゴタゴタに巻き込まれていたこと以外はとんと仕事がなく、毎日三食卵かけご飯だった。
真選組の時の依頼も土方からのお願いではあったが、銀時があんな状態のやつから金は受け取りたくねぇ、と突っぱね結局あんなに口座口座言っていたのにもかかわらず一銭ももらっていなかったのだ。
そんな貧困状態の万事屋、いや正しく言えば今は新八であるが、そんな新八の前に差し出された札束はまるで宝物のようだった。
それにしてもなんだかこの間より札束が分厚い気がする。
「これ、この間はいらないって言われたんだけれど、やっぱり助けてもらったから気持ちだけでも。」
「いただきます。」
いつのまにいたのだろうか、涙を流しながら立つ銀時と神楽。Aの手からは忽然とあの分厚い封筒がなくなっている。
「ちょっと銀さん!いくらなんでもそれは!」
「うるせぇぇ!今俺たちは喉から手が出るほど金が必要なんだ!金金金が全てなんだよ!」
ギャーギャーとただをこねる銀時と神楽に力で新八が勝てるはずもない。取り戻そうと必死だが、ちょちょいと避けられてしまう。
「私の気持ち分しか入ってないから、どうか受け取ってくれ。」
そんな言葉は聞こえてないようで、騒ぐ3人にAは静かに背を向けた。トントンと階段を降りる音も聞こえないくらいに3人は仲が良さそうに封筒を取り合っている。
Aは一度だけちらりと3人の方を見ると走りだした。真選組屯所に向かって。
一方騒ぐ3人は全く帰ったAには気がついていないようだった。取り合っている封筒は口が開き、パラパラと長方形の紙こぼれ落ちる。
「ああ!お、金…?が…」
ヒラヒラと床に落ちた紙を拾って3人はぎゅっと握りつぶした。
「やっぱり、あいつらは嫌いだ。」
「いつか殺してやるネ。」
「よくも…よくも、僕らの純情を…」
「「「金をくれー!!!!」」」
青い青い空に3人の悲痛な叫び声が響いた。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月15日 15時