＊ ページ3
疑心が胸を埋め尽くし、ぐるぐると締め付けてくる。喉の詰まりそうな感覚に、ふーっと息を漏らした。
指を広げ、枕をぎゅっと掴む。震えていた。
・
熱も引き、いつも通りな考査結果の返ってきた日。
母がレストランに和典を誘った。
「今日は休みだし、久しぶりに行きましょうか」
まるで ドラマの台本を読んでいるかのような冷淡な口調に、目を伏せながら頷く。
断る理由もなく、ここ最近耳元で幾度となく囁かれるあの医師のセリフを、なんとか否定したいという思いのためでもあった。
近場だがかなり評判のいいレストラン。雰囲気も良く、定員の態度も申し分ない、そこに、上杉親子は入った。
メニューを開き、どれにすればいいのか迷う和典。どれもが実際程ではないのだろうが美味に見え、いくらか好みのものが見つかり、どちらにしようか頭を悩ませていた。
その時、同じくメニューを開いていた母の発した一言。
「あなたには、これがいいわ。これになさい」
雷に打たれたような衝撃だった。
・
あなたみたいな弱い子を持った、私が可哀想＿＿＿
どうして、他の子みたいに強くなれないの＿＿＿
あなたのせいで、いつも私はつらい思いをしてる＿＿＿
本気で、そう思っていた。
母の言葉を、疑いもせずに聞いていた。
母 だから。
親 だから。
自分のせいで、母はつらいのだと
苦しんでいるのだと
・
今、悟った。
このところ感じていた、息苦しさ。
圧迫感。
まるでどんよりと雲が立ち込めているかのような、もやもやした気分。
これは何なのか、理解できなかった。
教科書には載っていない感情。
医師の言葉が甦る。
耳元で繰り返し囁きながら、だんだんと膨らむ。
・
＿＿＿＿ああ、
分かった。
この息苦しさの正体。
この人。
何をするにしても、そこには必ず母の姿があった。
小学受験をし、母の選んだ学校に通う。友を選ぶのも、母だった。
親の地位、子供の学力、世間の評判、その子にどれだけのステータスがあるのか。
大人になった時、利用できうる立場につけるだけの存在か。
その目にかなった者だけが、和典の傍に近づくことを許された。
和典に、友を選ぶ権限はなかった。
学校も 塾も 友も
全てを選ばれていた。
自由な時間など、無かった。
得意教科である算数をしている時こそが、自分の世界に翼を広げられる時間。
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とらい - 親子の関係やそれについての悩みがすごく共感できました。どうしてこんな素敵なお話を書けるのだろうと尊敬します。KZのみんなでも相談できそうですが彩の兄の祐樹さんも親子関係に苦しんでそうなので、上杉くんの良い相談相手になるのではと思いながら読んでいます。 (2019年11月11日 16時) (
レス) id: 6a44c88143 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ - La merさん» うん…今更新したとこでも、ボロクソ言ってますよ。まあ上杉君がびしっと言ってしまいますのでね←少々上杉母が不憫になるほどね。まあ、更新を見ればわかる！そして、とうとう完結だぜい(*´ω｀) (2017年4月5日 21時) (レス) id: d317c487ea (このIDを非表示/違反報告)
ハナ - La merさん» 結婚だぜい☆あら、申し訳ない。そう、影の薄いお父さんは、きっとかかあ天下の元でひっそりと生きてきたのよ←息子の理解者だけど、そこまで協力してくれてない…的な。まあ空気の存在だと思って下されば←買ったのよ。ささやかだけど、可愛すぎる家を！（笑） (2017年4月5日 21時) (レス) id: d317c487ea (このIDを非表示/違反報告)
La mer - 式を挙げるって……！！ 挙げるって……やだアーヤ可愛い（おい）そして、アーヤを「あんな子」だってっ！？ いくら上杉の親だろうと、そんな言い草は私が許さないよ。アーヤは美人で成績良くて天使で純粋で謙虚で……言うとこなしじゃないかっ！！ どこが不満なんだ？ (2017年2月17日 22時) (レス) id: c06852ffd8 (このIDを非表示/違反報告)
La mer - け、けけけ（動揺パニック唖然呆然）いやぁ、すっかり同棲だと思ってた私よ← そして恐らく、婚約届じゃなくて婚姻届だと思います◎ お父さんには言ってあるのね、うん……そして新居買ったのか。借りるんじゃなくて買ったのか。くぅ〜っ、金持ちめ！← (2017年2月17日 22時) (レス) id: c06852ffd8 (このIDを非表示/違反報告)
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