CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ46)

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「いや、あの後ニュース見たら結構骨折しとる人とかもおったみたいでさあ、俺結構急所とか外したり手加減してたはずやねんけど、さすがに普通の人の骨折るんはと思って」

どうやら手加減の方法を探していたらしい。
成程、強くなりすぎるとそんな悩みが出てくるのか。というか手加減して人の骨を折るとか、怖すぎる。少し引きつつも「…力、強いですもんね、志麻さん」と返すと。

「──まあ、混ざってる血のせいもあるんやけど、な」

あれ、あまり良くない話、だっただろうか。
返す言葉に迷っていると、彼はそれに勘付いたのか苦笑いで「何でもない」と言い、腕相撲でもしてみる？と少しおちゃらけた態度で笑った。

いや、骨折させた話をした後で腕相撲の提案は怖すぎる。

「…私の骨、折らないでくださいね？」
「……大丈夫、大丈夫…手加減する。折ったらセンラにしばかれる」

最初、大丈夫の言い方が少しだけ不穏だったのだけれど？空気を和らげようとした彼の提案に乗らない訳にもいかないので了承したけど。こ、怖いな。

何も置いていないテーブルの上で白衣の袖を捲って、彼の手を握る。合図して、と言われたので「よーい、ドン」の掛け声で始めたのだけれど…！

「かっ、えっ、かたっ」
「あはは、腕っぷしはマジの研究者って感じやな、ビクともせえへんやろ？」

ほんとに一ミリたりとも動いていない。私が椅子から立ち上がって全体重をかけようとも両手を使おうとも動かない。そんな私の様子を見て「力入れすぎて顔真っ赤っかやん」とケタケタ笑う彼。

本当にピクリとも動かない。いくら私の身体が女性と言えど、大の大人が全体重をかけて動かそうとしているのに。…彼はもしかしたら特別なのかもしれないけれど、ヒト以外の種族の身体能力の高さを身を持って知った。

「…は、はぁ、いや、つよ、強いですね？」
「っく、はは、何で息切れしとんねん」

無邪気に笑った彼。その表情に少しだけ、安心できたかも。静かな空間が落ち着かない訳ではない、彼とはむしろ沈黙を認め合える、居心地の良い関係だった、かもしれないけれど。

一度でもこうやって、笑い合いながら話せたのなら。信頼することができる、そのはずだから。

ひとしきり彼が笑って、コーヒーを片手に持ちながら椅子に座って談笑する。今まで彼と一対一で話すことが無かったから、なんだか不思議な感覚だった。