CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ47)

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「調子よかったんはホンマなんよな、実際」

彼は自らの手を握り締めながら呟いた。そう、この間の志麻さんの『調子が良かった』と言いながら帰ってきた時の話である。

具体的に聞くと、普段よりも的に当たった、とか狙ったように斬れた、とか。よく私の周囲にいた理由はそれなのか、と納得しかけてそれを尋ねると。

「……あー、いや、それは違う、かな」
「え？」

調子が良かったからという理由なのかと一人で納得しかけていたけれど。彼からの否定により仮説は無いものとなった。じゃあ、どうして？

「…いや、なんやろ。何でかは分からんねんけど、Aがいる周辺の空気？が落ち着くな～って感じがして」
「……居心地がいい、みたいな感じですか？」

「そんな感じ？」と首をかしげながら言った彼。感覚的なものだから、うまく説明はできないと言いつつも。「センラとおる時と似とる」と、少し重要そうなことを呟いた。

別にこの場所の居心地が悪いわけではないが、何故か安心できるらしい。センラさんの名前を口にしたことから推測するに──ただ私たちが静かだから？いや、そんな単純なことを理由とする雰囲気ではなかった。

じゃあ、本当にいよいよ──

「…私、本当に夢魔の血が流れてたりするんですかね」
「…どうなんやろ」

二人でコーヒーを啜りながら唸る。ここには参考になる文献も、検証するためのデータも無いから確かめようがないのが何とももどかしい。

…そうこうしているうちに時間は過ぎていたらしく。玄関のドアが開いた音が小さく聞こえ、三人の話し声も同時に聞こえた。志麻さんは「とりあえず今の話も参考になるんやったらうらたさんに話してもええけど」と言ったが。
何故だか少し歯切れの悪い様子。

「…いや、やっぱなんかハズいわ。俺が誤解のないように言うとく」
「誤解？何でですか？」

彼は「誤解があるといくら俺でもセコムに引っかかるかもしらんから」と、よくわからない事を言って立ち上がった。セコム？何のことだろう。

どういう事かと尋ねようとすると、私が口を開くより前に彼は言葉を並べた。

「Aに力分けてもらったっぽいし、坂田に近接の訓練付き合ってもらうわ」

ニッと笑った彼はやはり戦うことを好むらしく。
というか坂田さん、帰って来たばかりで志麻さんの訓練に付き合うのは大丈夫なのだろうか。エネルギー切れを起こしてしまったりしないだろうか──と、この数週間で自然に彼らのことを心配してしまうようになってしまったのである。