CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ18)

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「なあなあ」とすぐ傍で聞こえた声に驚き飛び退く。振り向くと燃えるような真っ赤な髪、坂田さんだ。

「Aちゃんって俺らの中毒症状とか出えへんってほんま？クスリとか効かへんって聞いたけど」

目をキラキラと輝かせながら聞いてくる彼。興味本位、おもちゃを見つめる子供のような顔だ。やはり私の体質に関しては、大体の概要ではなく詳細な部分まで彼らに知られてしまっているらしい。
彼の勢いと顔の近さに若干引きつつ「そう、ですね...」と小声で呟くと、「じゃあ」と帰ってきたその言葉。

「食べてみて？」

一瞬耳を疑った。
彼が差し出してきたのは先程うらたさんから回収したのだろう、片手に持っていたカップケーキ。色はよく見るあの薄い黄色で、そこから察するに味はプレーン、だろうか。

...そんな事を考えている場合ではない。私がいくら中毒症状等、諸々の物理的損傷以外を受け付けない身体であっても、拒否できる状態でそれを摂取しようとする馬鹿ではない。

しかも巷で話題の一口食べれば卒倒、傾倒、心酔の三点セットのお菓子。中毒症状が現れれば崇拝対象となる人物が目の前にいて、どうしてこれを自ら口に入れる人間がいるだろうか。

キラキラと目を輝かせてお菓子をぐい、と突き出してくる彼に対してその子供のような純粋さに何故か罪悪感を少し抱きつつ、やんわり拒否しようとして口を開こうとすると。

「...ちょい、坂田、いきなりそれはおかしいやろ」

先に声を発したのは私の後ろにいるセンラさんだった。いかにも不機嫌だと言わんばかりのその声色に、正直心底安心した。彼の私に対する"好意"と言って良いのか不明なその感情、扱いに今だけは感謝したい。

ほっと息を吐き、多分食べなくていいようになるなと少しだけ言い合いをしている彼ら二人を盗み見る。あまり坂田さんは口が上手い訳ではなさそうだから、このままセンラさんが論で捩じ伏せてくれるはず。

...そう思い、正面に視線を戻すと。
多分、この中で意思決定力が一番強いであろう茶髪の彼が、意地の悪い笑みを浮かべて目の前、足を組んでその指先を口元に当てた。

「...そうだな、真実かどうか確かめるためにも一回食わせてみるか」

まさにそれは、悪魔の一言だった。