CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:13 hit、合計:44,948 hit

Ⅰ：1.拉致、あるいは無知からの救済ページ2

20XX年、人間が神を否定しなかった世界。
神のその加護は広範囲に及び、人間の他にも様々な生物が知性を得た。人間はその他の生物には届かない次元、高位に至った知性で世界の実権を握ったが、やがて反乱を起こした人間以外の生物によってその主権は揺らぎつつある。

人外問わず、制御しきれなくなったテロ組織等が活発に活動しているこの世界。街で爆発音が響くことなど、日常茶飯事である。

────の、だが。

「はいはい邪魔邪魔！かかってくるんやったら並んで来いよ、全部頭ブチ抜いたるわ！」
「まーしぃ後ろ！俺ばっか狙ってくる奴おるからそいつ倒してくれへん！？」
「まかしとき、一発でやったる」

まさか私がある日突然その抗争に巻き込まれてしまうなど、1ミリたりとも想定していなかった。

追手から逃げ回って研究棟の廊下を走りながら、紫髪の男性は私を横抱きにしている金髪の男性の後ろに銃を向けてバン、と一発銃声を響かせた。

ほ、ほんとに打っちゃったんだ。先程から抱えられながら目に映る景色が目まぐるしく変化していく為、確信とまでは行かないが打たれた人物から血液が出ている様子は無いことから、おそらく彼らが少し前に言っていた通り気絶させるだけのものなのだろうけれど。

自らの身を縮こまらせながら大人しく抱えられて、銃声が飛ぶ廊下を物凄いスピードで駆け抜ける風を感じる。私だって拉致されたくて拉致されたわけじゃない。この状況だと仕方ない。

この、今私を抱えている金髪の彼が私を突然放してしまったら大ケガを負ってしまう可能性がある。当たりどころが悪かったら死んでしまうかも。加え、後ろや前方から飛んでくる銃弾の数々。彼らが実弾を使っていないにしても、研究棟の警備側は常に拳銃を所持している。

今だけはこの国の治安の悪さを、警備員にですら拳銃の所持が許されている法を憎んだ。人質のような扱いをされている私に向けてではなく拉致した犯人の彼らに向けて撃っているのだろうが、運悪く私に当たってしまったら非常に痛い、いや痛いどころでは済まないかもしれないじゃないか。

それを想像して身を震わせると、金髪の彼はそれに気付いたのか「大丈夫ですよ、もう少しで安全なところに着きますからね」と心酔したような瞳、頬を色付かせて私の顔を見下ろして言った。な、何でそんな顔をしているのだろう。私、貴方のこと知らないのに。

…そもそも何でこんなことになってしまったのか。原因を探る為、記憶は今朝まで巻き戻る。