CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ6)

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「勿論、大切な人のことを忘れろと言っているわけじゃありません。ただ、私とその"ひと"を重ねたまま、というのはセンラさん自身が辛いんじゃ──」

ハッとした彼。唇を少し噛んで、目を伏せて俯いた。

彼の私への接し方からして、その"ひと"とは主従関係を結んでいたような、そんな雰囲気を感じたから。どこまでもその影を追い続けるというのは、どうにも報われない行動のような気がして。

「──すみません、Aさん自身を見てたんやなくて、他の人と重ねてたって…不快な思い、させましたよね」
「…違います。もう、私の言葉くらい信用してくださいよ」

顔を上げて私の瞳をじっと見た彼。あぁ、また泣きそうな表情をしている。ちがう、と言い訳をしたそうに口を開きかけているけれど。

「信頼、してください。私はセンラさんのこと、信頼してます」

その蜂蜜色の、艶やかな瞳が見開かれた。照明の光が彼を照らして鮮やかに、美しく見えて。彼はまた唇をきつく結んだけれど、それは後悔や暗然といった負の感情から来るものではないと、確かにその瞳が物語っていた。

「わかり…いや、わかった。これからは、ちゃんと俺と──Aとして、対等に接する」

真剣な表情で私を見つめた彼。こくりと頷いて私が笑えば、安心したように表情を崩した。うん、これで安心とは言えずとも、彼と私の間にあった壁は崩せたような、そんな気がした。

「片付けして、実験室に戻りましょうか」と彼に声をかけて、マグカップを持って立ち上がろうとしたその時。彼が私を引き留めるように「でも」と言葉を紡いで。

「Aも、俺に敬語使わんとって。それぐらいええやろ？」
「…うーん、うん、そう、だね」

…なんだか気恥ずかしい。
彼から視線を逸らして誤魔化すようにコーヒーを一口飲めば、後ろから「あ、照れとる」なんて声。ちょっと、小ばかにしてるような言い方しないで。

「も～、そんな照れんくってもええやん！あはは、かわいいなあ、もう」
「……ちょっと、敬語は外しても変な扱いはしないでよ！不敬だよ不敬」

「不敬ってなんやねん！」と笑う彼は、多分いつもの調子に戻っている。その笑顔は今まで見たものの、その全てを塗り替えるような──晴れやかなものだった。

多分、もうきっと、大丈夫だ。