55話 ページ6
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鳴
とりあえず近づかないことには
挨拶もなにも出来ないから教室に入って自分の席に行く。
あえて顔は見ない。
不自然にならないようにカバンを置いて
ついに話しかける時が来た。
鳴「本宮さん!」
名前で呼ぼうと思ったけれど
まだ慣れずに苗字で呼んでしまう。
鳴の声を聞いた隣の席の女子は鳴の方に顔を向ける。
それは果たしてAなのか、そうじゃないのか─。
A「あ、成宮さん」
鳴「うっわ……」
振り向いたのはやっぱりAだった。
振り向くと同時に揺れる1本に結い上げられた髪
Aの大きな目と鳴の目がバッチリ合う。
思わずその姿にいい意味で驚いた「うっわ…」という声を漏らした。
カルロ(写メ撮っとくか)
白河(あの成宮が赤面して硬直してる、なかなか面白い)
何も言わずに固まる鳴の姿を教室のドアの影から連写するカルロスと
面白そうに見てる白河。
気が済んだのかあとは自分たちの教室に帰ってく。
A「野球部朝練だったの?お疲れ様」
昨日で随分慣れたのか普通に話しかけてくれるようになったことに喜びたいのだが
感情が色々追いついてこない。
まずおはようのおの字も出てこないのが困った。
A「成宮さん…?」
話しかけようとするけど
本当に本気で声が出てこない。
いつもいつも出るのにここぞとばかりに。
鳴(は?なにこれ聞いてないんだけど!?髪型変えてくるとか俺聞いてないね!)
当然です。
連絡先を知らないのだから知らせる手段もない。
「はいおはよー、席ついてー出席確認するぞ」
突然のことに戸惑いまくって話しかけられないまま鳴とAはそれぞれ席に着いた。
Aはどこか恥ずかしそうに後れ毛をいじくってはぼんやりしている。
鳴(俺の姉ちゃんも似たような髪型してるの見たことあったけど、これってやる人変わるだけでこんなに見え方違うの?)
ついつい、チラチラ見てしまう。
何をしてても今日のAは様になりそうな
本当にどうしようもないかわいさがそこにある。
鳴(うわっ、目が合っちゃった)
一瞬でそらすはずだった視線は
そらせてなかったようでAとバッチリ目が合った。
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年4月21日 19時