90話 ページ41
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頬に触れて数秒後、ゆっくりとその手が小さい白い手に掴まれた。
離さないとと思った頃にはもう時既に遅しで長い睫毛に縁どられた瞼がゆっくりと開き
綺麗な瞳がじっと、青い瞳を見つめる。
鳴(これ…寝ぼけてるんでしょ?完全に寝ぼけてなきゃおかしいもんこれ)
鳴(落ち着け落ち着け、何これくらいで恥ずかしがってんの?ありえないって)
こんなにほわほわした話し方と顔でいられるとなんだかこっちが気恥ずかしくなってしまう
寝てても無防備起きてもしばらく無防備
早くちゃんと目が覚めて欲しいとも思うのだけれど…でもそれはそれで残念な気がして
─成宮くん、かっこいいのに優しいなんて本当に王子様みたいだねぇ
人ってのは単純なもので
想いを寄せている相手からかっこいいだの優しいだのいいことを言われると
気分がよくなって恥ずかしくなっては心の底から嬉しくなってしまう。
鳴「そうだよ?せっかくだし起こしてあげたんだから俺に感謝してね!!」
A「ん、ありがとう成宮くん」
鳴「めちゃくちゃ素直じゃん…多分冨田だったら俺の顔面にグーパンだったよ」
少しばかり生意気なことを言っても
怒るどころかえへへと笑って返してくるあたり、底抜けて優しい性格かよっぽど寝ぼけてるかのどちらか。
まさか寝顔を見て頬が緩みまくってましたなんて言えるわけがない、言ったら前の席のゴリラに鳴がぶっ殺される。
鳴「いつから寝てたの?」
A「授業始まってからすぐ…かも」
鳴「さすがに俺もそんな早く寝たことないんだけど、どんだけなの?」
A「なんか…眠くて、帰ってすぐ寝たいなぁって思ってたらすとんって」
最初は壁を感じたのに今この瞬間はそれさえも感じない
ちゃんと目を合わせてくれるし、笑いかけてくれるし、とにかくちゃんとしてる。
あの体育の時間の時、そしてそれを思い出した時あんなに赤面されたからどうしたものかと思っていたが心配なかったみたい。
鳴「Aちゃんって優等生に見えてそうでもないよね、いい意味で抜けてる」
A「よく言われる、すぐ寝るとも」
鳴「ふーん、そう」
A「うん」
別に寝てたって抜けてたって鳴からすればなんでもオッケーで
鳴「別にそういうとこあっても…嫌いじゃないけどさ」
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年4月21日 19時