78話 ページ29
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A「言ったけど…」
怒らせてしまったのだろうかと
不安になって見ていられなくなって
視線を下に落とした。
目線が酷く冷たくて、悪い意味でドキッとして後ずさりしたくなる。
鳴「……なーんてね、今の嘘だけど」
A「うそ?」
鳴「嘘だよ、ちょっとからかっただけ」
この空気に耐えられそうにない
完全にやらかしたと思ってたら
Aの顔を1回見てから鳴がくすくす笑って「よっと」と言いながら立ち上がった。
鳴「ごめん、からかって」
A「びっくりした」
A「成宮さん、見たことないくらい怖い顔してたよ」
鳴「そう?」
ちょっと目を細めただけなのにここまで怖がられるとは思っていなかった
それを誤魔化すように
Aの手からカゴを取って棚の上にあげようと近づく
A「え、え、ちょっ…」
鳴「よいしょっと」
いくらなんでも、ボールを戻すためとはいえ
こんなに至近距離でいなきゃいけないのか
またしても距離が近い
ほぼ壁ドン状態でAの頭はそれこそ真っ白けっけで気持ちが追いつかないし
鳴はそんなこと気にせず棚の上に置いていく。
A「な、なるみ…成宮さん…」
少し上を向けば鳴の顔
視線をどこに向ければいいのかわからない。
ただ本当に距離が近くて、無意識にドキドキしてしまって落ち着かなくなる。
またからかわれてるのかな?そんなことすら考えてはさらさらと砂のように流れてく。
鳴「何?」
嬉しい時の笑顔というよりは
からかうような、意地悪な笑顔。
これ以上近づかれたらドキドキしてる音が聞こえてしまうんじゃないかと今度はハラハラしてきた。
A「距離、近いよ」
鳴「本宮さんずるいよね」
A「何がずるいの?」
目を逸らそうとするのに逸らせない
いや、逸らせないというよりは逸らさせてくれない
逸らすなって言われてるような、そんな顔。
鳴「彼氏いるのにそういう顔しちゃ駄目だって」
A「私…本当に好きじゃない」
鳴「うん、知ってる」
A「本当に好きな人は…」
これだけで伝わるわけがない
それでもいつかちゃんと言えたらいいのに
今はまだ恋してしまったと認められない
そんな中途半端な気持ちで好きになってしまったら迷惑になってしまうだけだ。
鳴「俺だったら本宮さんのこと幸せにできるよ」
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年4月21日 19時