【◇】銀木犀 3 . (ページ40)

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138話ページ40

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何だか見てはいけないものを

見てしまったような謎の罪悪感に包まれた

まさか寝起きのAがこんな状態になるとは

全くの予想外だ。

A｢いっその事死んでたいです｣

鳴｢いやダメ、生きて｣

A｢寝顔見えてました？｣

鳴｢…………見えてたってもしも言ったら？｣

小さな手で小さな顔を隠していたAが

恐る恐るその手を離した

ぎょっとするくらい顔が真っ赤っかで

林檎のようになっている。

A｢無理、笑う？｣

鳴｢なんで笑うの？｣

A｢いやもうそれは…あの…あの人に寝顔が妖怪って言われたから｣

鳴｢妖怪ってどんなチョイス？それ｣

"寝顔が妖怪"

この言葉にちょっと笑いそうになった

でも発言者が糞みたいな彼氏(仮)のため

一瞬でそれは消えた

鳴｢別に見たところで俺笑わないよ｣

A｢え…なんか笑いそう｣

鳴｢うわっ、Aちゃん俺の事そんな人に見えてたの？傷つく｣

A｢なんか弱み握ってイタズラしそうだもん｣

多分見てしまったら笑うよりも先に

しばらく思考が停止する

もしも相手が男子だったりしたらそれはそれは

もう腹を抱えてその人の寝顔を見て笑うだろう。

鳴｢しないよ｣

鳴｢てか、Aちゃん思いっきり落としてる｣

A｢え？｣

鳴｢ペン！｣

A｢あ、ほんとだ｣

バカにしたりなんか絶対にしない

まぁ弱みにはするかもしれないけれど

誰かに言いふらしたり見せびらかしたりはしないと断言出来る

他の人には見せたくない、と言った方が正しいのだろうか。

鳴｢前も思ったけど安心した｣

A｢何が？｣

鳴｢俺、Aちゃんのこと真面目な子だって思ってたけど｣

落としたペンを拾って

きょとんとしたAのことを見る

相変わらず顔がもう恐ろしいレベルで整っている

見たくてもすぐ目を逸らしてしまうほど綺麗

鳴｢いい意味でそうでもなくて、話しやすい｣

A｢いい意味で…｣

鳴｢部活以外学校はつまんないとか思ってたけど｣

鳴｢Aちゃんといると楽しいから今はそうでもないよ｣

はいとペンを渡したのに

いつまで経ってもAがそのペンを受け取ることはなかった

A｢私も、同じ…｣

ただちょっと、やっとその距離が動き出した