124話 ページ26
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そんなことないよ、といいつつ
手のひらの上にあるバナナオレをじっと見つめ
Aは─
A「ただ正直に言うと…」
A「そうだったらいいな、とは思うけど」
ほんの少し嬉しそうに微笑んで
藍里にしか聞こえないくらい小さな声で呟いた
だがやっぱりまだその気持ちが恋だということにAは気がついていない
そして鳴がどこかへ行ってる時に限って
Aは見たことがないような顔をする。
藍里「ま、実際どうなのかは知らないけどさ」
藍里「少しくらい期待したってバチ当たらないでしょ」
藍里は本当は知っている
鳴があんなに優しくするのも、あんなに笑顔で接して何度も話しかけるのも
Aが特別で、好きだからだということを。
でもそれを今言ってしまえば
Aを振り向かせようと思っている鳴の気持ちを台無しにすることになるし
何より本人が自分以外の誰かにその気持ちを伝えられるのを嫌うだろう。
A「そうかな」
藍里「そうだよ、もっと自信持ちなよAは私が知ってる女の中で1番綺麗でかわいいんだからさ」
A「それはちょっとわかんないけど」
A「成宮くん、早く帰ってこないかな」
藍里「えっ!?」
穏やかな顔でAの背中をバシバシ叩いていた藍里だったが
Aの口から出たとんでもない発言で
教室中に響き渡るくらい大きな声をあげた
今確かにはっきりと、Aは鳴が聞いたら確実にうるさくなることを言った。
藍里「い、いいい、今…今!!今!!」
A「どうしたの?」
藍里「いや……なんでもない……成宮許さん」
A「変なの」
"早く帰ってこないかな"
ついさっき原田や白河たちに連行されたばっかりなのに
Aはまだかまだかと鳴の帰りを待っている
特別な感情を自覚してはいないものの
いないと寂しい存在になっているということは確定だ。
A「そういえばこの間成宮くんと好きなジュースの話をしてた」
藍里「あの時コソコソしてたのってそれなの?」
A「うん、成宮くんは炭酸好きって言ってたけど私はバナナオレにハマってるって言ったの」
藍里「(いや待て待て、それもう完璧に…)」
どこにでもあるバナナオレ
それでもこれは他とは違う。
A「覚えてくれてたんだ」
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年6月16日 1時