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No.14 ページ16

「ふむ、それでは仕方ない。今日の所は同じ花で我慢してもらうとしよう」

妖精はそう言って腕に花を抱えたまま踵を返した



わたしは慌ててその背中に声をかける


『あっ、あの、()も一緒に行ってもいいですか?』


思考を切り替えて彼にそう問いかけた



色んな生徒が口にする彼女の話題

何故か無意識に惹かれてしまう彼女のことを、少しでも解明したくてネモは妖精に頼み出た





妖精は顔だけ振り返って首を傾げている


「別に構わんが…お主あの子と関わりあったか?」

『…たまに授業が一緒でした。彼女とは何度かペアを組んだりして…』



化けた相手の記憶を漁りながら言葉を紡ぐ

今回ネモが化けた相手は、生前確かに僅かだが厄災の少女と話した事があった





「…まぁよい

わしに着いてこい」


『は、はいっ』



言うや否や颯爽と歩き出した妖精の後をネモは慌てて追った

歩幅はわたしより短い筈なのに小走りしないと彼に追い付けない


身のこなしが軽いとはこの事か





途中、化けた本人に合わないか慎重に周囲を探りながら足を動かす


校舎を抜けメインストリートを渡り、運動場を横目に正門まで辿着いた頃にはわたしは息が上がっていた




「くふふ、お主少し鍛えた方がよいな」

『は、はひ』


悪戯げに口角を上げる彼にネモは何とか返事をする




『(……この人、ネモが化けたイグニハイド生が体力ないこと分かっててあのスピード出したな)』


置いていかれなかっただけマシだろうけど


確信犯がくふくふと満足気に笑う声をバックにネモはため息をついた




『(この人がわざわざ歩くスピードを落としてあげる相手はあの子しか居ないんだろうな…)』


学園で一人喪服を纏う男に……大事な人に先立たれた妖精にわたしは何だか哀しくなった





「行こうか」


それだけ言って妖精は大きな門を潜った



わたしもそれに続こうと、息を整えて足を学園の外へと踏み出す








だが









バチッッ




『痛っ!』


門の外へと足を出した途端、わたしは強い電流と共に体を弾かれ尻もちをついた



訳が分からず大きな鉄の柵を見上げる

すると電流がバチバチと空中で激しく音を立ていた



『(嘘…)』


目を見開く



『(学園から出られない…!?)』

指先を門に近付けると同じように弾かれた


どうしようとわたしは妖精を見遣った




だが





「今の、魔力…」


妖精もまた門を見て呆然と立ち尽くしていた




彼の足元に花束が滑り落ちる

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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりです‪wこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時

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