No.13 ページ15
ふらふらと亡霊のように身体を揺らしながらわたしは校舎を彷徨った
あのまま一人暗い所にいたら良くない気がしたから
顔は適当にイグニハイド生のを拝借した
顔色悪くてもふらふらとした足取りでも怪しまれなさそうだし
失礼な事を言ってる自覚はある
『はぁ…』
なんだか学園に来てから波乱の連続な気がする
その割に自分の手がかりは殆ど掴めてないし
わたしは中庭の一番陽のあたる場所に位置する花壇に腰を下ろした
そよ風に吹かれた白い可憐な花たちがふわふわとそのからだを揺らしている
そっと土に触れてみるとそれは湿っていて、誰かが水やりをしたばかりだと分かった
『(綺麗だな…)』
少し土の付いた指先を小さな白色の花弁へと伸ばした
と、その時
「すまんが、それに触れるのは遠慮してくれんか」
『えっ』
花に触れる直前、背後から音もなく手を取られわたしは素っ頓狂な声を出した
慌てて振り返ると、そこには漆黒で服を統一した男の姿が
名を、リリア･ヴァンルージュ
『す、すみません…とても綺麗だったので、その…つい…』
「くふふ、そうかそうか。手塩にかけて育てておるから、そう言ってもらえるとわしも嬉しいよ」
そう言うと彼は愛でるように軽く指先で花弁に触れた
瞳は見てわかる程の愛情で溢れている
『(あ…)』
愛おしそうに花を一輪ずつ見て回る姿に、わたしはこれが誰へ贈られるものなのか悟った
あの少女だ
小さな妖精が愛した、世界に一人だけのあの子
『これは…マーガレット、ですか？』
花にそこまで詳しくないわたしでも知ってる花の名
尋ねると妖精は「そうじゃよ」と作業の傍ら答えた
「あの子はなんでも似合うが、特に白は良いな」
特に綺麗な花を選別していくつか丁寧に摘み取っていく
それをどこから出したのか可愛らしい赤色のリボンで一纏めにして腕に抱えた
「だが毎日毎日同じ色の花だと「飽きた」と怒られてしまうやもしれん」
何か良い花を知らんか
そうアバウトに聞かれるも、わたしは花に明るくないので横に首を振った
『滅多に貰ったことないですから』
無意識に漏れた声だった
何も過去を覚えていない自分だけど、花はあまり貰ったことがないような気がした
そもそも、わたしが居たところは植物が生きるには過酷な環境だった
ツキン…
『(痛い…)』
だがそれも、刺すような頭の痛みによって直ぐに忘れていったのだった
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
