Episode6 ページ7
ルサールカは全てをお姉様たちに打ち明けました。静かにルサールカのお話を聞いたお姉様たちは、話が終わり、ただ呆然としています。
「ニンゲンの王子を助け、恋をしてしまった……?」
モルーアお姉様がようやっと零したその言葉は、鉛よりも重いものでした。そしてお姉様たちが我に返るには充分すぎるものだったのです。ローレライお姉様は見たこともないような冷たい表情へと変わりました。
「いいですか、よくお聞きなさい。ルサールカ、その恋は紛い物。早く忘れておしまいなさい」
「そんな……酷いですわ、ローレライお姉様! 私は本当に、心から王子様をお慕いしております!!」
酷く傷つくルサールカを慰めるように、セイレーンお姉様は肩を抱いてやります。しかしセイレーンお姉様も難しい顔をしていらっしゃいました。
「けれどね、ルサールカ。ローレライお姉様は正しいことを仰っているわ」
「セイレーンお姉様まで……」
縋るルサールカを宥めながら、セイレーンお姉様は小さな子どもを諭すように言葉を零しはじめました。
「ニンゲンは数十年という短い人生を送り、輪廻の輪に還りやがて転生する、そんな永遠の魂を持っているの。けれど私たちは、300年という悠久の時を経ると泡沫となって弾けて消える」
「私たちは輪廻の輪などに入れやしない。永遠の魂など持てやしないわ。貴女が生きる時間と王子が生きる時間はあまりにも違うの。その永い人生で、もっと素晴らしい殿方と恋に落ちることだってあるわ」
追い討ちをかけるように継がれたモルーアお姉様の優しく残酷な言葉。けれどルサールカは諦めることがありませんでした。
「私が望むのは、数多の恋と殿方ではなくたった1人の王子様だけなのです。300年の
そう、彼女は人間になりたかったのです。人魚が持つことの赦されなかった、恋しい王子様の持つ永遠の魂に憧れたのです。
咽び泣くルサールカを見て、セイレーンお姉様とモルーアお姉様は哀しそうに宥めます。ルサールカの嘆きを聞き、ローレライお姉様が遂に鉛のような唇を開きました。
「……ルサールカ。貴女の願いを叶えられるであろうモノを、私は1人だけ知っています」
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芙蓉(プロフ) - 影狼さん» そう仰って頂くことが、何よりも物を書く励みになります。“人魚姫”は私にとっても思い入れのあるもので、何としても良い作品を書きたいと思っておりました。影狼さんの心を少しでも揺さぶることができたこと、本当に嬉しく思います (2018年2月20日 21時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
影狼 - 何回も読んでいるのに、なぜか毎回号泣して、画面が凄い濡れます。名前をつけたり、言葉遣いを変えるだけなのに、この作品は素晴らしすぎる! (2018年2月18日 15時) (レス) id: eaea3a9226 (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - 神鳥さん» ちょっと端折られていますね。人魚は確かに王子を愛しました。そして彼の持つ永遠の魂に憧れ、人間になりたいと願ったのですよ (2017年8月14日 21時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
神鳥(プロフ) - 私が聞いた話によると、人魚姫が泡にあったあと妖精になり、三年間善い行いをすれば、不滅の魂になると聞きました。つまり人間になれるということです。人魚姫の目的は人間になることだったので。しかし、あまりこのことは聞かないので、私の勘違いかもしれません (2017年8月14日 21時) (レス) id: c9a08bd565 (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - るいさん» ありがとうございます。そう言っていただけるだけで嬉しい限りです。期待にお応えできるよう頑張りたいと思います (2017年8月14日 19時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芙蓉 | 作成日時:2017年8月14日 17時