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12.壁 ページ13

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「…ん、だざい、さん? 」


寝ていたAの長い睫毛がゆっくりと開く。まるでそこだけ時間の流れが違うかのように開けられた漆色の瞳に私が映る。不思議と、その目に映る私は鏡で見るより何倍も美しく見えた。

寝ぼけまなこの彼女を歩かせるのは少しだけ不安なので、彼女が目を覚ましても尚、彼女を抱いている。すると、国木田君が私に対して云った。


「お前にも力があったんだな」
「ええ? 酷いなぁ。国木田君の目には私がそんなに弱く見えるのかい? 」
「普段力仕事も録にせず、自分の嗜癖に時間を費やしているお前にそんな力があったのかと思っただけだ。あとAを持てるのならお前段ボール五つくらい持てるだろう」
「厭だよ、重いもん」


そんな会話をしていると、腕の中のAちゃんがくすくすと笑った。彼女の滅多に見ない静かな笑いが珍しくて、つい魅入るように見てしまう。

嗚呼、この子はこんなにも美しい子だったろうか。


吸血鬼でないと意識して彼女をちゃんと見るのはいつぶりだろう。暫く、否、彼女に恋をしてからそんなものはなかった気がする。

ただ、 "吸血鬼の彼女" としてずっと見ていた。『種族の壁』だとか『人外との恋愛』だとか。そういう風に見ていた気がする。


「Aちゃん」


ある種の毒花だね。
人を惹き付けて止まない、毒花。麻薬の具現化。溺れて溺れて抜け出せない底なし沼の女だ。


「歩けるかい? 」


君の瞳に映る私は滑稽に見えるだろうか。不覚にも、私がそう云った時 夕日が私の背に光を当てたらしく、彼女の瞳の中には夕日の逆光を受ける私がいたのだ。

とても、阿呆な顔をした私が。

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月海(プロフ) - ピロウさん» わわわわっ…有難うございます!!皆キャラが吸血鬼なんてテンプレ捨てようぜというネ友の発言から見出したこの作品を褒めていただいてうれしい限りです…更新頑張ります! (2017年3月5日 21時) (レス) id: 5a213bcdf5 (このIDを非表示/違反報告)
ピロウ(プロフ) - 純粋に面白いです!続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2017年3月5日 21時) (レス) id: aafbc19e8e (このIDを非表示/違反報告)
月海(プロフ) - 東條にこさん» 太宰さんが吸血鬼だとテンプレっぽいので夢主ちゃんを吸血鬼にしてみました!有難うございます!!まあ私はこーゆー系統の話は書くのが恥ずかしくなって完結後死にたくなるのが目に見えてるんですけどね← (2017年3月3日 12時) (レス) id: 5a213bcdf5 (このIDを非表示/違反報告)
東條にこ(プロフ) - 太宰さんが吸血鬼の話はありますが、夢主ちゃんが吸血鬼なんですね!更新楽しみにしています! (2017年3月3日 9時) (レス) id: db321f67f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はる | 作者ホームページ:h  
作成日時:2017年3月3日 0時

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