[◇]純愛クレッシェンド[小湊亮介]

６小節目 ページ8

♡６小節目



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｢はぁ……｣


教室から外を眺め思わずため息が出た
慌ててトランペットを構え直す

すぅっ、と息を吸った瞬間



｢相楽。どうしたの｣

｢ふぇっ……あ、先輩。｣



急に名前を呼ばれて変な声が出たが
特にそれを笑うことなく、いつもの優しい笑みで
私に近づいてきたのは先輩……松橋 彩未先輩。



トランペットの副パートリーダーで
実質的、現・ソリスト

2年で既にファーストを務め、
先輩達の代の中では1番上手いとされる、そんな彼女は




｢悩み事。あるなら相談乗るよ？｣

いつも私を気にかけてくれる、そんな
素敵な優しい先輩だった。




｢悩み事……っていうより、｣

｢うん？｣

｢わからないこと、なんですけど｣



人とのコミュニケーションが苦手な私でも
彩未先輩だけは何でも話せる

だから、ここ数日のよくわからない感情を
先輩にひとつ隠さずすべてを伝えた




｢ふふっ……｣

｢……彩未、先輩？｣


突如、笑い出した彼女
声をかけると、今度は面白おかしそうに
笑う彼女が私の頭に手を乗せた



｢相楽、“恋”って知ってる？｣




“恋”

それは、異性のことがきになってしまうこと
｢好き｣という感情を持つこと





｢相楽のそれは、きっと恋だよ｣

｢恋……私が、恋を？｣




そう、恋。

綺麗に笑う先輩は数度私の頭を撫でると
今度は私のトランペットをもたない手を取り
私自身の体、心臓にてをあてた




｢相楽、目閉じて｣


言われたとおりに目を閉じる

聴こえるのは、私の鼓動
手で感じるのも私の鼓動




｢その男子の姿、思い浮かべな？｣




見えたのは、あの時の彼
夕方、教室窓際で二人並んで空を見ながら
私がトランペットを吹いた

そして……｢すごいじゃん｣
そう言って笑ったあの時の小湊くんの顔が。



……そして、ドキッと跳ねる鼓動

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