30 ページ30
【名も知らぬ薔薇】
ホガード。まね妖怪ともいわれるそれは人が一番恐れるものへと姿を変化させる。自身が気付かぬ内側に巣食う恐怖の対象にすらも。
「リディクラス!!」
グリフィンドールの生徒が呪文を唱えると瞬きの間にピエロが道化をモチーフにしたケーキへと早変わりし、周りに笑い声が溢れる。
Aはその列の最後尾に並び、ボガードの変化を静かに眺めていた。手前に並んでいたトムがそんな彼女を見て思わず声をかける。
「A?」
『私、ボガードの前に立つのがとても恐ろしい。だって私が心底恐れているものが分からないんだもの。……それに、それにね。もしも吸血鬼(ヴァンパイア)の本性が出た私に変化したら、』
そこまで言ってAは溜め息をついた。いつもなら楽しい授業も今回ばかりは肩をすくめるしかない。そして、それはトムも同じである。
「恐れているものが分からない、か」
『……、トムは?貴方は何になると思う?』
「僕にもさっぱりだよ。何せ恐れるものなんて何もない。強いて言うならダンブルドアかな」
『スリザリンの寮生はどうしてそう彼を目の仇にするのかしら。私には理解出来ないことね』
「ふふ、Aは分からなくて良いよ」
そうこうしている内にトムへと順番が回ってくる。誰も彼もが固唾を飲んで見守る。何せホグワーツで一番の有名人が最も恐れるものだ。
欠点なんて何一つない、完璧な生徒。それがトム・リドルだ。そんな彼が恐がるものなど誰も想像することはできない。できるはずもない。
ボガードが空中で姿を探すかのように様々な姿へ移ろう。やがてトムの恐れるものが見つかったかのようにピタリ、と姿を固定した。
「＿＿＿＿＿＿、」
誰もが驚いたように目を丸くした。ボガードが変化したのはトム自身だったからだ。いや、トム自身というには少し違和感を感じる。
「リディクラス」
だがその違和感が形にならない内にトムが目を細め、ボガードに杖を向けた。ボガードはトムの微笑む顔が描かれた人物画へと姿を変えた。
そしてAへと順番が回ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 706人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - ヴァンパイア⁉️めちゃ好きです🫶 (9月9日 21時) (
レス) @page32 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
くりきんとん - 主人公の秘密だったりリドルの独占欲がじわじわと感じられる描写など、すごく面白いです！文章も細かく書かれているため内容が薄すぎなくてスラスラ読みやすかったです！更新大変かと思いますが頑張ってください！続き楽しみにしています！ (2022年3月20日 15時) (レス) id: aa56424b90 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - つづきが気になります！ (2022年3月20日 0時) (レス) @page28 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - トム・リドル大好きなんです！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2021年6月12日 1時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セニオリス | 作成日時：2021年6月5日 17時
