愛 4 ページ4
「主！食事は摂らないと駄目だよ！」
「うん、ありがと」
食事を受け取り自室に戻る。
嗚呼、こんな主嫌だろうな。
「あのさッ、僕達は主の刀だし気にしなくて良いんだよ！」
気にしなくて良いなんて言われても出来ないのが人の子だ。
「そうだね。光忠はさ、やっぱり顔が見えてた方が嬉しい？」
そちらの方が指揮が上がるならそうした方が良いだろう。
明日、皆のやる気がなくなったりしたら大変だ。
「うん！主の表情が見えた方が嬉しいよ！」
「そっか、分かった」
彼らは人ではない、刀だ。
けれど、人にしか見えない。
部屋にある太郎太刀本体に私は触れる。
冷たい感触が手に伝わる。
元は刀、だから惑わされてはいけない。
私の力じゃ大太刀は振るえないから明日は皆の戦いを見学しよう。
「主、呼びましたか？」
シュルリと太郎太刀が現れた。
「あ、違うの。少し触れただけ」
「そうですか。主、どうかしたのですか？」
優しく太郎太刀は私の頬へと触れた。
酷い顔してるんだろうな。
「何でもないよ、ごめんね」
「主、鶴丸国永に悪気はありませんよ。皆貴女の顔が見たかったのです」
そうだったのか、皆見たかったんだ。
「そう、太郎さんも見たかった？」
「えぇ、貴女の表情が分かれば私が出来る事が増えます」
刀だなぁ、私には主なんて向かないのに使われてくれている。
「太郎さん、鶴丸にはおやつ禁止、日本号にはお酒禁止って言っといてくれる？」
「分かりました」
ふっと彼は消えてしまった。
こんなの見ても驚かないのだから相当現世から常識がずれてしまったことだろう。
明日の仕事、終わらせなきゃな。
報告書を作って、あとは当番も決めなくては。
あとは明日の部隊の褒美に何かお菓子でも作ろうかな。
気晴らしになるしそろそろしたら台所借りよう。
いつも皆喜んでくれるし明日のはいつもより美味しいの作ろう。
「さて、何作ろうかな？」
ーーー
鶴丸side
驚いた、驚き過ぎて自分にびっくりだ。
想像以上に綺麗な顔立ちだったのだ。
あの場で取らなければ良かったと思った程だ。
でも、最後に見た彼女は怒りと困惑に満ちていた。
「主からおやつ禁止令が出ましたよ」
太郎太刀がいつの間に居たのかこちらを見下ろし言った。
「ゲッ！それはないぜ！」
彼女が作るお菓子とやらは美味しいのだ。
光坊の作る物よりも何故か俺には格段に美味しく思えるのだ。
「鶴さん、主に謝った方が良いよ」
謝る気はない…。
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
