太宰さんや、文豪たちに愛される短編小説 (ページ23)

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俺のだ　中原中也ページ23

中原side

「俺のだよな？」

「え、違うよー？」

奏が、俺から逃げる。

付き合っているが、自由で余り顔を合わせない。

まるで花に止まる蝶のごとく俺からすり抜ける。

捕まえたくて、付き合ったが捕まえられない。

「じゃあ、何で付き合ったんだよ」

そう言うと、くるりと振り向いて妖艶に笑った。

「中也が好きだから」

嬉しいのに俺の所に繋ぎ止めて離したくない。

何処か行ってしまいそうで…。

何時も怖くなる。

「何処行くんだ？」

「んー、ケーキ屋？」

甘い物に目がないこいつなら有り得る。

けれど、何時も心配で疑ってしまう。

「俺も行く」

一瞬驚いた後楽しそうに笑った。

その笑顔に何でも許しそうになるし、何でもしてやりたくなる。

兎に角、笑顔が可愛い。

「中也が珍しー嬉しいな」

おまけに素直だから此方が赤面する。

「そうか？」

「中也、ケーキ食べるー？」

「俺は良い。手前が食べろよ」

席に座って、ケーキを頼む。

奏は嬉しそうに選んでいく。

「良くそんなに食えるな」

頼まれて来た量を見て、ビックリする。

「ん？好きだからね」

嬉しそうにそう言う奏にドキリとする。

「そうかよ」

「中也、あーんして上げる」

「はあっ!?」

差し出されたフォークを手に楽しそうに此方を見ていた。

仕方なく口を開けると甘い。

「本当に中也って顔綺麗だよね」

マジマジと俺の顔を眺めて言った。

素直すぎる。

「手前、此方見んな」

呆れながらも嬉しくて顔をて手で覆う。

「えー」

「ほら、次食わせてやるよ」

「ん、ありがと」

やはり嬉しそうに食べている。

「犬みたいだな」

「え？」

「俺に一生飼われろよ」

「いーやーだ！」

本当に首輪でも付けて繋ぎ止めて置きたい。

フラリと何処かに消えるのが、心配で気が気じゃない。

「そうかよ。なら、食ってやる」

「ええっ!?中也の鬼！」

「何度でも言いやがれ」

やはり可愛く頬を膨らませて怒る。

「中也、好きだよ」

「はっ！？」

「ふふっ、中也は？」

何か求める様に聞かれ、言葉に詰まる。

「あぁ？愛してるに決まってんだろ」

きすをすると、嬉しそうに笑った。

「ありがと、ずっと愛してるよ。中也」

儚げに笑って奏は席を立った。

何となくいなくなりそうで俺は手を掴む。

奏は、フワリと笑って俺の手を振り解いた。

「奏」

「バイバイ」

いきなりそう言って姿を消した。

訳が解らず立ち尽くす事しか出来なかった。