第十話 ページ12
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次の日の朝。
いつもの時間帯に学校へ行き、自分の席について本を読んでいた。
相変わらず話しかけるなオーラを全開に放っていた為、声をかける者はまずいない。
その分読書に集中出来るからいいのだけれど、やはり彼女も女の子である。
それなりに友達だって欲しいし、ケーキやお洋服など女の子らしい話とかもしてみたい。
人並みに恋して、恋バナとかで盛り上がって…___。
そんな事をしてみたい気持ちはあるが、それを実行する事が出来ないのだ。
そんな自分に溜息を零しそうになったその時。
黒髪のミディアムヘアーに、赤色の瞳。
昨日の彼が教室に入ってきた。
まぁ、同じ2年なのでクラスが一緒なのは前々から彼の存在は認識していたものの話しかけた事は無い。
鞄の中に入れてある昨日の本を彼に貸そうと思って1度本を閉じたが、直ぐに諦めたようで本を開く。
無理だわ、どう考えても無理よ…!!
と、虚しくも心の中で叫び無意識に口から溜息が零れる。
それから暫くして担任の先生が入っきてSHRが始まり、ボーッとその様子を眺めていた。
見た感じはボーッとしているが、内心はそうではない。
よし、このSHRが終わったら渡しに行こう…!
なんて、関係ない事を考えて意気込んでいればその時間もあっという間に終わるもので。
SHRが終わった休み時間。
ガタリと席を立ち、向かうは彼の机である。
手にはもちろん昨日の本が握られており、それをぎゅっともう一度握った。
「あの、急にごめんなさい。昨日の本、渡しそびれてしまって。」
本を読んでいた彼にそっと声をかければ、顔を上げた彼と視線が交わる。
声は凛としているが、視線が交わった事で更に緊張は高まり心臓はバクバクと脈打っているそんな状況。
そんな状態でも、いつものように平然を装い「ありがとう」なんて言って彼に本を渡した。
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