八柱 ページ8
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目の前に広がるのは本丸を囲む枯れた森だけだが、管狐は迷いなく真っ直ぐと歩いていく。
疑問を抱きつつ、森に一歩足を踏み入れた瞬間に…景色が変わった。
ぼんやりと浮き上がる様に現れたのは、それなりの大きさをした平屋。
これが、管狐のいう離れなるものだろう。
「…こ、れは」
ファンタジーを目の当たりにして、驚きのあまりに声が出ない。
踏み出した一歩を、戻す。
そうすれば景色はまたしても様変わりし、枯れた森が目の前に広がる。
また一歩踏み出せば、離れが現れた。
「遮蔽結界でございます。敵意や害意がある場合、ここを通ることは許されず、跳ね返されてしまうのです」
…結界。
そんなものが…漫画の世界じゃあるまいに。
「…表面上隠された敵意などにも反応するのですか?」
「はい、もちろんでございます」
つまり、離れで過ごせば少なくとも殺される心配はないってことなのか。
こういうものがあるにもかかわらず4人の被害が出てるの…?
そんな疑問を持ちながらも、離れへ足を踏み入れた。
母屋とは違い、血痕も刀傷も無い。
ただ…埃などの時間経過に伴う汚れは酷かった。
間取りを確認するために一通り見て回った。
部屋は全部で3つあり、その他にキッチンとお風呂、トイレなども完全に設置されていた。
古い外見の建物だったために水回りは覚悟を決めていたが、それは杞憂で。
私が現代で使っているものと然程変わりはなかった。
「…雰囲気が壊れてしまうのでは?」
「…審神者様方は基本、便利な時代から来られますので。あまりに不便ですと、仕事を続けて頂くことができないのです」
なるほど、根を上げるわけか。
どうやら、一台渡されたスマホもその措置の一環らしい。
さらに、パッドとデスクトップパソコン、ノートパソコンと、電子機器は充実している。
おまけに、母屋も離れもコタツやエアコンも完備だと言う。
…まあ、ここまでしないと現代人はやっていけないか。
生まれた頃からずっとあるものが無いと、ストレスも溜まるだろうしね。
離れを一周して玄関に戻ってくる。
外から日が差し込み、それに照らされてキラキラと空中を舞うのは埃…つまりハウスダスト。
私はだんだんと痒くなってきた目を擦りながら、ポツリと呟いた。
「…掃除、するか」
「…はい。私めもキツネの身ながら、助太刀いたします」
…え?
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時