七柱 ページ7
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「…建て替えたほうが早そうだなぁ」
屋敷の方へゆっくりと歩いて行きながら口を開けば、本音がぽろっと零れ落ちた。
少し近づいただけなのにわかる。
あちらこちらに刀傷や血痕があり、泥や埃はもちろんのこと、これ以上ないほどに荒れ果てた建物。
障子は全て穴が開いてあり、酷いところは障子の枠自体が無い。
「…本丸自体は、審神者様がいらっしゃるだけで徐々にですが回復して行きます」
「本丸自体は…ね」
「ですが、血痕や埃などは全て掃除をしなければなりません」
…ふぅん、建て替え要らずか。
管狐の話では、本丸は生きているらしく、本丸の主人である人間から霊力を徐々に喰らって自己修復していくらしい。
ただ、本当にゆっくりと時間をかけてなので、今現在は修復が追いついていない状況なのだそうだ。
「こちらには刀剣男士様がいらっしゃるのですよね?」
「はい。母屋の大広間にいらっしゃいます」
本丸をじっと見てみるものの、その気配は伺えない。
ただ、不気味なほどに静まり返った建物が鎮座しているだけだ。
「…神様方は、いかほど人間を嫌っていらっしゃるのですか?」
「……政府からお聞きになられていないのですね」
私の問いに、顔を曇らせる管狐。
狐の見た目ではあるものの、酷く表現が豊かだ。
「すでに3人斬り殺されており、1人が重傷を負い、審神者の任を解かれております」
斬り殺された、という言葉に背筋が冷える。
視界の端に、飛び散った血が黒くこびりついた木の床が入る。
自分が生贄になった、などと先ほどまで思っていた。
それは間違いではないのだろう。
…しかし、私以外にも贄となった人がいるだなんて思ってもいなかったが。
「…そうですか。では、そちらには行かない方がよろしいですね」
いきなり刀剣男士のいる大広間とやらに行っても、運が良くて牽制され、運が悪ければ…斬り殺されてしまうだろう。
そうなるとわかっていて屋敷に乗り込むほど、私はバカではなかった。
「…そうですね。離れがございますので、そちらを使われては如何でしょうか?」
心なしか沈んだ声に頷けば、案内を買って出てくれるらしい。
ットットット…と軽快に跳ねる様な歩みを追う。
尻尾の先がゆらゆらと揺れた。
母屋の端の方まで来るが、それらしい建物が見えることはなく首を傾げる。
「審神者様、こちらでございます」
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時