66 ページ16
．
あの日、
あの時、
私はきっと、選択を間違えた。
「大丈夫？」
私はそれが正しいことだと、信じて疑わなかった。
ひとり苦しんでいる人に手を差し伸べるのは、正しい事なのだと。
しかし、今ではもうそれが正しい事であると胸を張って言えなくなった。
「もうひとりじゃないよ、私が一緒にいる」
私の独りよがりの偽善が、彼女の全てを捻じ曲げてしまった。
彼女は、ひとりで頑張っていたのに。
彼女は、気づかれないよう隠していたのに。
私はそれを無神経にも暴いて、日の元へ晒してしまった。
「笑ってよ、『姫』は笑顔が一番似合うよ！」
私は今、一番好きだった彼女の笑顔が怖い。
綺麗だと、今まで一度も口に出せなかった漆黒が塗り潰された。
そんな変わってしまった、いや、変えてしまった彼女を見ることが…私は苦手で辛い。
彼女は、外国人とのハーフで特異な容姿を持っていた。
外国の血が色濃く出た西洋人形のような顔のつくり。
しかし、その髪と瞳の色は漆塗りのようなどこまでも深い黒。
子どもというのは酷く短絡的なもので、自分たちとは違う違和感のあるその容姿を嫌った。
当然のように施行される、幼いながらに陰湿で苛烈ないじめ。
それを見過ごすことができなかった私は、手を差し伸べてしまった。
これがきっと、間違いの始まりだった。
誰もいなかった味方が、急に現れた彼女。
人間は、味方がいれば強くあれる人もいれば弱くなる人もいる。
彼女は…後者だった。
その当時唯一の味方であった私を、盲信した。
心酔し妄信し狂信しやがて…崇拝した。
薄々とそれを感じながらも、異常な執着を認めることなく私は彼女に接し続けた。
彼女はこれを私の是と受け取ってしまった。
可能な限り私について周り。
私さえもいじめの被害にあいそうになれば、彼女はその原因を変えた。
漆黒の髪を金糸の髪に、漆黒の瞳を紺碧の瞳に。
初めて見たときに綺麗だと思っていた黒は、人工的な色で塗り潰されて消えた。
「私、Aちゃんのためだったらなんでもできるよ！」
笑いかけられることが、いつしか怖くなった。
そこにいる彼女は、『彼女』ではなくなっていた。
私が助けたいと願った、『西園寺 姫子』はもう居なくなっていた。
ああ、どうしてこうなってしまったんだろう。
そう嘆いても、時は既に遅く。
彼女は跡形もなく消え去った後だった。
…私が、『西園寺 姫子』を殺した後だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヒヨコ(プロフ) - こんにちは、とても大好きです。← ただ１つだけ。84の戦闘シーン、exchangeではなくreplaceの場所がないでしょうか？replaceが置き換えだと認識してるので、ちょっと違うかも？となりました！更新楽しみにしてます！ (2018年10月1日 15時) (
レス) id: 1a5754497d (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる。 - No,2ヒーローがベストジーニストになってませんか？気のせいならすみません。 (2018年9月17日 16時) (レス) id: b076da837c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - うわあああ好きです！！夢主ちゃん頑張れー！ (2018年9月9日 11時) (レス) id: 1914631717 (このIDを非表示/違反報告)
たまごぼーろ。(プロフ) - いけいけ夢主ちゃん！姫をぶん殴れ！！ (2018年9月7日 10時) (レス) id: acb2629ba7 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる。 - いけいけかっちゃん！夢主をおとせ！← (2018年8月23日 22時) (レス) id: b076da837c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2018年7月11日 21時
