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12流 ページ12





仁「…なんであんな事したんじゃ?」


硬く、問い詰めるような声に、無意識に身体が強張った

涙も止まらないし、震えも止まらない


貴「…母さん、が…家に居なくて…誰も誰もッ」



あたし(・・・)を見てくれない



見てくれていた、母さんも

ずっと一緒にいた詩野さんも

支えてくれた光も


ここには誰一人いなくて


帰った家は暗くて、冷たくて

毎日震えながら布団にくるまる様に寝て


あたし以外の誰一人も寝起きしない家

冷たくて、寒くて


泣きたくて、泣けなくて



見せる事をしないあたしが悪いのもわかってるのに


怖いんだ、どうしようもなく



貴「…あたしは…生きていたくない」



あたしがほぼ無意識にそう言うと仁王くんは顔をしかめる



貴「…でも、でも死にたくもない」



今さっき


死にかけてわかった





あたしは死にたくないんだって


でも


生きたくもなくて



仁「…生きんしゃい」


仁王くんはそう言った

幼い子供に言い聞かせる様に


優しい声音で、彼はとても残酷な事を言う


あたしの涙腺はさらに緩んでボロボロと頬を伝わずに落ちていく

仁王くんはあたしの涙を掬った


仁「…もっと泣けばええ」


貴「生きていたく_____」


ない、と言おうとすれば、人差し指で口を閉ざされる


仁「俺が見ちゃる、お前さんの事を俺が見ちゃるよ」


仁王くんは、あたしを真正面からギュッと抱きしめる


仁「…だから、泣きんしゃい」




「生きんしゃい」




貴「なんで…ッッ」


仁「俺がお前さんが生きる事を望んどるからじゃ」


望んでくれる


その言葉はとても重みがあって

ふともう一人望んでくれる人を思い出した



光は、悲しんでくれるだろうか

あたしが居なくなったら、泣いてくれるだろうか

目の前で死にそうになったら、仁王くんのように怒ってくれるのだろうか



貴「…仁王、くん」


仁「…雅治、ナリ…A」


貴「雅治…ありがとう」




生かしてくれて、ありがとう


まだもう少し、頑張る




仁「…頑張りんしゃい、手伝っちゃるよ」


あたしは、雅治の胸の中で何度もなんども頷いた


まだ涙が留まる事はないようだ


泣きすぎて目が痛い



でも、それでさえも





今のあたしには、嬉しかった






生きてる事が嬉しい、なんて



今更でしょ?

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ひな - 凄く面白いです!読んでくうちに感動して涙が出ました! (2019年3月5日 2時) (レス) id: b401e87431 (このIDを非表示/違反報告)
ばろろん - 仁王希望で! (2015年3月30日 18時) (レス) id: 2ad4b6f1e3 (このIDを非表示/違反報告)
蘭希 - 財前オチがいいです! (2015年3月28日 19時) (レス) id: 09f1b7a4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みかりん♪ - 柳さんがいいです! (2015年3月28日 10時) (レス) id: ef8895fc8b (このIDを非表示/違反報告)
ゴマミソ - 柳くんでお願いします! (2015年3月27日 9時) (携帯から) (レス) id: 499e9b52c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2015年2月15日 13時

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