疲れたあなたを2434たちが出迎えてくれるそうです3【短編集】

葛i葉 6 ページ31

そのままわしゃわしゃと撫でると、何すんだよ！？とブチギレの葛葉



その顔は先ほども赤らんでいたが、より赤くなったように見える
そんな葛葉が愛おしくてくすくすと笑った



「葛葉、私たち18年も一緒にいるんだよ、今更離れていくと思う？」



腹が立ったのか拗ねてしまったのか、私と一向に目線を合わせようとしない葛葉の視線の先にむりやり移動して笑いかける



葛葉は、18年なんて大した年数じゃねぇよと言いながら私の手をはねのけた
確かに葛葉からしてみたらそうなのかも



ということは、たとえ私が葛葉とずっと一緒にいても、時がたてば葛葉にとっては私との思いでなんて米粒程度でしかないということ



この関係は私の一人よがりの関係なのかもしれない、と思うと心がきゅっとなってしまう
葛葉はそんな私を静かに見つめている


長生きをしてきて、先に死んでしまうのが怖いからという理由で別れを告げられたことが彼にはあるのだろうか
もしあったとすれば今の私の考えもわかっているはずだ、この沈黙はそのせいなのかも



「じゃあ、葛葉の心に少しでも残れるようにもっといろんなことしなきゃね！」



気分を上げるように少し大きな声を出しながら、ぐい、と手のひらを差し出た
葛葉は私の行動が予想外だったのか目を丸くしている
思えば葛葉と一緒に外を歩いたのは、一番最初の私がストーカーのように張り付いていた時だけ
それだって一緒に歩いてる、なんて言えるものではない



「少し散歩しようよ」



催促するように、ね？と首を傾ける
しばらく私を見つめていたが、しょうがねぇな、なんて生意気な口をききながら私の手を取った



引っ張って立たせようとするがヴァンパイアであっても男の子なのだろう、びくともしない
うんうんとうなる私を見て愉快そうに笑い、立ち上がった



いきなりの行動に引っ張ろうとしていた力がその対象を失って、私を後ろに倒す
葛葉がよっ、と転びそうになる私の腰に手を回して支えてくれた

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