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右後ろから、一つ。
――ドラッグの参考人と間違っちゃいねぇよな?

左後ろから、一つ。
――間違ってたとしても参考人じゃねェや。ありゃもう手遅れでィ

頭の中でも、一つ。
――この状況を理解するためなら魔法でも薬でも歓迎してやりますけどね!!!

先程から動かない視線の先は、塀の先に見える、江戸という名に不釣り合いな建物

この星の玄関。アルタナの目印。松陽先生の命綱。

あぁ、こんなにもはっきり覚えているのに、どうして私はここにいる?

この世界に――銀魂という、漫画の中に――私なんて登場人物はいなかったのに。

「あ、目が覚めたんですね!よかった」

声のした方に目を向ければ、どこにでもいるような地味な顔

手にはラケット、それからあんぱん

『山崎、退…』

「! あの、失礼ですけど…どこかでお会いしましたか?」

私は答える代わりに、やっぱりかという苦笑いをこぼす

正直この状況に一番驚いているのは私なのだ、聞きたいことがあるのも私。

どこで会ったかという質問には満足のいく答えは出せそうにない

「言いたくねェなら言わないでいい。で、お前は誰か、ってのには答えられるか?」

誰でも躊躇わない質問を選んでくれたのだろうが、今の私は混乱してて。

眠る前なら即答できただろうこんな簡単な質問にも答えられなかった

『答えたいんですけど、今ちょっと記憶が信じられないというか。
皆さんの誰とも、どこでも会ったことはないんです!でも私は知っていて…』

それきり黙り込む私に、極まりが悪そうに頭を搔いて庭に出る

放り捨てた煙草を靴でつぶしながらハッとしたように

「街に出りゃなんか思い出すかもしれねぇな。今日の昼は丁度俺と総悟が当番だ」

「うぇ、めんどくせぇ。…まぁいいや。じゃあいつも通り昼に起こしてくだせェ」

私は目を見開いた。鬼の副長や地味な偵察も同じように。

だってあの、暇さえあればサボるか土方暗殺計画かの総くんがだよ!?

自分から仕事に行くのに起こしてくれだなんて!!

『昼、雨降らないといいけどなぁ…』

口に出したのは完全に無意識だったけど、どうやらそれも不思議だったようで

二人とも驚いた顔のまま、視線は私に向いた。

よく考えたら初対面で普段の仕事ぶりを知っているのも相当怪しいもんだよね

「…昼までは屯所内で好きに過ごしてろ。じゃあな」



遠ざかる三人分の背中と理解不能な現状に顔を歪めたつもりでも、

その口元には本人すら気付かない笑みが浮かんでいた。

肆 加筆→←弐



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作者名:麻外谷 | 作成日時:2018年1月22日 23時

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