××1:suddenly ページ3
「俺っち天城燐音って言うんだけど、おね〜さん知ってる?」
自由に跳ねる緋の髪を揺らして、天城燐音__『Crazy:B』のリーダーで、私の愛してやまない人__が私にそう問いかける。
アンサンブルスクエアよりちょっと離れた繁華街の外れ、たまたま通りかかったそこに、彼はいた。
いやいやちょっと待って、この人本物か?そっくりさんじゃない?いやでもどう見ても本物だ。私の勘がそう告げている。え、嘘、本物の燐音さん…?今日命日なのかな…?
「お〜い、おね〜さん?聞こえてるかァ?」
「ひいっ」
突然の出来事に固まってしまっていた私を余所に、燐音さんは私の顔を覗き込む。そのせいで綺麗な蒼色の瞳とばっちり目が合ってしまってうわぁぁぁ待って待って顔が良すぎるむりむりやだやだ駄目だやっぱ私今日命日だわ……
ぷしゅー、と脳のキャパシティが限界を迎える音がした。正常な判断が出来なくなって、燐音さんがすき、って感情しかわかんなくなって、
「っ燐音さんのことは知ってます、し、あの…私、貴方のことがすきです!!」
___沈黙、と空気の流れが止まったような感覚。
……やってしまった。私からしたら毎日見ていて毎日愛を送っている相手だけれど、燐音さんからしたら初対面の奴から告白されるとかいう状態なのだ。私だったら「何言ってんだコイツ」って言っちゃうよ。普通に引いちゃうよ。
「………っあの、え〜っとですね…これはその…」
どうにかして取り繕うとしても、推しを目の前にしたクソザコの脳味噌は使い物にならない。何か考えるんだ自分。…あーやっぱり顔がいいな?このまま嫌われてもこんな接触イベに遭遇したとか同担にマウント取りまくれるじゃんざまーみろ。
だんだんと関係のないことを使えない脳味噌は考え始めている。まともに働け。
「……っはは!おね〜さん面白いなァ!」
「え」
ぐるぐると一人で思考を回していたら、燐音さんが急に笑い始めた。突然のことに困惑していると燐音さんは立ち上がったかと思うと、わしゃわしゃと乱暴に私の頭を撫でて
「しかも俺っちのファンなんだろ?嬉しいなァ」
いつもの挑戦的で妖しげな笑みとは違う、今まで見たことの無い…柔らかい微笑みを投げかけてくれる。………え???燐音さんが私の頭を、え、頭、ん????
「そうそう、俺っちおね〜さんに頼みたいことがあるんだけど___」
私の頭に手を置いたまま喋る燐音さんに耐えきれず、私の意識はそこでぷつりと切れた。有難う世界……
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作者名:飴巴まひろ | 作成日時:2020年6月23日 10時