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「ティーカップは行き渡ってるね?」

寮服を着た面々が集まり、何でもない日を祝う。

それがハーツラビュル寮の仕来りだ。

初めて聞いた時は可笑しな風習だと思ったし今でも偶に思う。

──が、美味しい飲み物やお菓子を理由もなく飲み食べし放題と考えればそんな気持ちも吹っ飛んでしまうのだ。

「では、乾杯」
「かんぱーい!」

リドル君が音頭を取り、みんながカップを掲げた。

そしてダイヤモンド先輩がトラッポラ君に耳打ちをする。
捧げ物を渡すにはきっと今が絶好の機会だから。


私達の誰もがそう思った。


「マロンタルトだって!? 信じられない!」


しかし、彼の反応は期待したのと全く逆だった。

マロンタルトを此処に持ってきた事だけが問題で規律違反になるらしく、破棄しろだなんて言うの。

彼らが一生懸命に作ったこのタルトを。

「…どうしてそんな酷い事言うの」
「Aちゃん落ち着いて」

横でダイヤモンド先輩が小声で私を止めた。

どうやらリドル君には聞こえていなかったらしい。

でも、だって、みんな頑張ったんだよ。
許してもらえるようにって栗拾いからしたんだよ。

それなのに、幾ら何でもそんな言い方は酷いよ。

「おかしなルールばっか並べやがって…馬鹿じゃねーの」
「馬鹿…だって?」

トラッポラ君の爆弾発言に、湧き上がってた気持ちが少し落ち着く。

凄く驚いたし私はそこまで言ってない。

確かにリドル君の意見はご尤もだと思う。
小さな事が大きな問題に繋がり得るのは分かってる。

だけど、これは流石に可笑しいよ。

四人もそう思ったのだろう。
「はい 寮長」なんて言えないと断言していた。


首をはねろ(オフ・ウィズ・ユアヘッド)!」


グリム君が放った最後の煽り文句が決め手となり、遂にリドル君の怒りが頂点に達す。

彼のユニーク魔法をこんな間近で見たのは初めてだった。

だから知らなかったのだ。

寮生が首に付けていたあれが、お洒落なんかじゃなくて首輪だった事に。


私は気付かなかったのだ。


彼ら四人は先輩に摘み出されてしまった。

そのまま続行される『何でもない日』のお祝い。

こんなにも楽しくないと思ったパーティーは後にも先にも今日だけだろう。

何も言えなかった自分が情け無い。

何も出来なかった自分が不甲斐無い。

ぎこちない笑顔を浮かべる寮生を横目で眺め、会場の端っこへ移動した。

そして誰にも見られない様に体を丸めながら捨てられ歪んでしまったタルトを密かに口に入れた。

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りん(プロフ) - ラムさん» はじめまして!そう言っていただけると此方も凄く嬉しいです!ゆるゆる更新になってしまうかもしれませんが、頑張ります!ありがとうございます! (2020年9月27日 0時) (レス) id: 6f476b47f8 (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 話しの続きが気になる (2020年9月26日 16時) (レス) id: 2a665cb182 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2020年8月27日 15時

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