続き ページ10
ここら辺治安悪いからさぁー、といって私の手をさらっと握る。モテる男は、さらっとこういうことできたゃうんだなーと感心してしまう。
「ねぇ、一二三、女性恐怖症なんじゃ、なかったっけ？ホストとか大丈夫なの？」
「それを克服したくて。スーツを着ると、女好きになれるんだよね」
「頑張ったんだね、」
「まぁね、俺好きな子いるからさ。その子の為に女性恐怖症治そうと思って」
一二三なりに努力したんだ、頑張ってるんだ、自分ももっと頑張らなくちゃ、と気合いをいれる。
「ここだよ、独歩と一緒に住んでんだ〜」
マンションに着いて、部屋に入ると、男二人で住んでいる割には綺麗な部屋に驚く。
「綺麗だね、ちゃんと掃除してるんだ」
「独歩が全然しないからさぁ〜、俺がかわりにやったげてる」
流石、高校の頃から変わらないこの夫婦感。変わっていない関係に、ふふっと吹き出す。
「ご飯作るから、そこらへん座っててよ」
一二三に言われた通り床に腰を下ろした直後、疲れのせいか眠ってしまっていた。
「Aー？」
一二三の声と美味しい匂いで目を覚ます。目の前には美味しそうな料理が並んでいく。
「ごめん、寝ちゃって」
「大丈夫〜、疲れてんだね」
お疲れ様、と私の頭を撫で、一二三はまた台所へ戻り、皿と箸を持ってきた。
「独歩は今日も残業だろうから、先に食べちゃおう」
いただきます。と声が揃い、私は料理を口に入れた。温かくて美味しい。私より、断然上手。
「おいしいっ！一二三は天才かっ！」
「そんなんじゃないよ〜」
にこにこと笑う一二三につられて、私も笑顔になる。それから、お互いの話をたくさんした。今まで会えなかった分を埋めるように。
「片付けくらい私にさせてね、」
と言い、皿を洗っていると、一二三は後ろから私を抱き締めていた。突然のことに皿を落としそうになってしまったくらい、驚いた。
「えっ、ひふみ？どうしたの？」
「ごめん、我慢できなくて。俺、Aが好きだよ。その為に女性恐怖症も治して、こうやって触れるくらいになったんだ」
「私の為……だったの？」
「うん、」
「一二三、私も、好きだよ。ずっと、好きだったよ」
「え？ほんと？」
「ほんとう」
信じられないといった一二三の顔を、手を拭いて両手で包む。
「大好きだよ」
どちらからともなく唇は近づき、甘いキスを繰り返す。
その時、扉を開けた独歩が驚いたのは言うまでもない。
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作者名：袴田 怜 | 作成日時：2018年12月17日 1時
