６月５日 ページ7
地面の色がぽつぽつと濃い色へ変わっていく。
雨の匂いが鼻についた頃、空が鳴り出した。
段々と強くなる雨を執務室から眺める彼の後ろに人の形を成していく。
「堂々とした不法侵入だな、A」
少し揶揄う様な調子は彼らしい。
バレるとは思っていなかったので、驚かすことはできないのはとても残念だが。
ずっと窓の外を眺めているので、傍まで歩いて近くへ寄る。
硝子玉のように曇りの無い蒼い双眼は塞がれた空を見ていた。
「外じゃなくても、居られるんだな」
「天気が雨なら何処にでも。それよりも中也さんは」
マフィアだったんですね。
そう告げれば少し俯いて、溜息をついた。
何かを悩むように下げられた目は初めて会った日のように地上を見下ろしていた。
そして瞼を下ろして髪をくしゃりと掻いて、再度溜息をついた。
「手前は、何だと思ってたンだ」
「夜勤の方か、残業の多い方なのかと」
「まぁ、朝会うことが多かったからな」と、それもそうかと私の言葉に納得の意を示していた。
首に手を添えた彼は少しの沈黙の後、机に置かれた帽子を手に持って目だけをこちらに一瞬だけ向け、帽子を頭にのせた。
「いつもの場所で晴れるまで暇でも潰すか」
「いいですね。でも、私はどこから出れば」
あー、と長々と伸ばして、何かを思いついたように扉を開けて廊下を確認した。
ちょっと待ってろ、と一言残し廊下へ出て行ってしまった。
数分後に扉が開き手招きされたため近づいた。
「じゃあ、姐さん。お願いします」
「約束は絶対じゃ、よいな」
姐さんと呼ばれた彼の目の前に立つ着物を着た女性が一人いた。
何かを条件に何かが決まったようだが私にはさっぱりであったが女性に手を引かれる形で歩き出した。
扉が開けばそのまま三人で乗り、下へと降りる。
「あの、何故３人なんでしょうか」
「俺が見知らぬ異性と二人きりだと怪しまれるだろ、だから姐さんに頼んだンだ」
そう云われ、私の手を握っているいまだ名も分からぬ女性へと目を向ける。
「私は尾崎紅葉じゃ、其方の為と言われてのう」
口元を袖で隠し綺麗に笑う彼女にお礼を言うとそっと優しく頭を撫でられる。
マフィアだとは思えないほど優しい人が多い事がとても不思議でならない。
出口まで見送られ何時もの屋上まで彼に送ってもらった。
今日は雨が止むまでマフィアのことでも聞いてみようか、そう思った。
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羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 小説を好きだと言ってくれてありがとうございます。完結するかは分かりませんがゆっくりと続きを書いていこうと思いますので、覚えていましたら応援してくださると嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2021年10月8日 2時) (
レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 約1年越しに好きと言ってくださってありがとうございます。長く放置してしまいましたがモチベも戻り言葉の数も自分では増えたと思います。返事が遅くなりすみませんでした、放置しておりましたがまた少し頑張ってみようと思います。 (2021年10月8日 2時) (レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
おとーふくん(プロフ) - 今の日本に似てる感じが好きです！！もっと早くにこの作品の存在知りたかった... (2020年7月28日 21時) (レス) id: 2f2d7a1768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽夜 | 作成日時：2019年8月5日 17時
