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6月4日 ページ6

閉じられた窓掛(カーテン)から小さく光が漏れ始める。
一度休むと中々動く気になれないのが普通であるが、眠りの浅い彼は少し早めに起きた。
窓掛と窓を開ければ、乾いた風が顔を撫でた。
湿気がとれてカラっと晴れた青々と広がる雲一つない空の下、今日は彼女はいないのだと実感する。

何時もの服に着替え朝食を軽く済ませ、何時でも出れるように支度をする。
ソファに鞄を置いてテレビをつけて、淹れておいた珈琲を少しずつ喉へ流し込む。
流れる天気予報も、デェタ放送も傘(マーク)のない晴れ予報だった。
小さくため息を吐いて必要ない情報を流すテレビを消す。
無造作に置かれた煙草を衣嚢(ポケット)に押し込んでかけてあった外套を羽織る。
鞄を片手に外へ出れば自動鍵がかかる音が小さく鳴った。

迎えに来ていた部下の車に乗り込む。

「今日の任務は」

丁寧に置かれている資料を手に尋ねる。
軽く目を通すが、枚数からしてまた徹夜は確定のようだった。

「武器の横流しをしている傘下の始末を尾崎幹部が変わってほしいとのことです」

「姐さんから理由は聞いてねェのか」

「首領の出張の付き添いをすると」

資料の中身は完璧に出来上がっており、証拠も事細かに書かれていた。
再度、一枚一枚斜め読みしていると一枚紙が足元に落ちた。
自身の横に資料を一度置き拾い上げる。

少しの動揺と、驚きで目を少し大きく開けた。

それは写真で、昨日の祭りのもの。
ただそれだけではなく、自身が彼女といるものだった。
小さい祭りだから、と思っていたがあの人の目は誤魔化せなかった様だ。
帰ってきたらとことん聞かれるだろう、そう思い鞄へ仕舞い込む。

一つの建物の前に止められる車。
殲滅させる傘下の拠点についたようだ。
鞄を置いたまま車を降りれば既に集まっていた部下を確認する。

「俺は上に行く。手前らは包囲して出てきた奴は皆殺しにしろ」

指示を出し屋上を見上げる。
彼女のいない屋上は少し億劫だが行くしかない。
徹夜続きになりそうだが明日は会えるだろうか。

「これが終わったら横流し先の殲滅、それから報告書と資料整理だ」

そう告げられた黒服の彼らはサングラスの下の隈がまた酷くなることだろう。
社畜(ワーカーホリック)を休ませるには首領から無理矢理休暇にされる以外ない。
今日からまた仕事詰めである。それでも。

「報告書を出したやつから一日休暇だ。行くぞ」

誰よりも優しい幹部を嫌えないのもまた事実なのである。

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羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 小説を好きだと言ってくれてありがとうございます。完結するかは分かりませんがゆっくりと続きを書いていこうと思いますので、覚えていましたら応援してくださると嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2021年10月8日 2時) (レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 約1年越しに好きと言ってくださってありがとうございます。長く放置してしまいましたがモチベも戻り言葉の数も自分では増えたと思います。返事が遅くなりすみませんでした、放置しておりましたがまた少し頑張ってみようと思います。 (2021年10月8日 2時) (レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
おとーふくん(プロフ) - 今の日本に似てる感じが好きです!!もっと早くにこの作品の存在知りたかった... (2020年7月28日 21時) (レス) id: 2f2d7a1768 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽夜 | 作成日時:2019年8月5日 17時

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