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始まった2回戦、対烏野。

1セット目を取られて、2セット目を取って、迎えた最終セット。

信介が監督に呼ばれて横に座った。


最後になるかもしれん、とか、頑張れ、とかそんな言葉は野暮だと思った。



「私はもうちょっと、一緒におりたい」

信介の顔を覗き込むと、信介と視線が絡まった。
それから信介は、ニッと笑って、コートに向かった。
何かを言うことすら野暮やったかもしれん、と後悔する。


外からでもわかるくらい、空気が締まる。
やっぱり信介は恐い先輩か。


ぱっと入って何度もボールを拾う信介から目が離せない。

「ナイスレシーブ」

思わず声が漏れた。

ちゃんとやんねん、いつも通りやるだけや

信介がそう言うのが聞こえてくるみたいだった。




試合は終盤にさしかかって、デュースにまでもつれ込んだ。
取って、取られてを繰り返す。



手をギュッと握って祈る。
やってきたことは間違っていない。
みんな全力を尽くして戦っている。
誰かの行いが悪かった訳でもない。
やれることはやった。

だから、もうあとは、祈るしかない。


30対30。


お願い、お願いだから。


30対31。

再び迎える向こうのマッチポイント。



侑が治にあげる。
初めて見る攻撃。烏野の速攻みたいな。



どん ぴしゃり。



烏野の1年コンビにブロックされたボールは、拾えない。






フッと全身の力が抜けた。



シードを貰って、その初戦の敗北。

終わったなんて毛頭信じられない。

目もカラカラに乾いていて、こんなに泣けないものかと。

こんなに、あっけなく。



ベンチから立ち上がって選手と監督と同じように礼をする。

鳴り止まない拍手の中、信介の号令で今度は応援に挨拶をする。




悔しいとか悲しいとか、何も思わなかった。

いや、負けたという事実がまだ現実味を帯びない。



監督も信介も淡々とインタビューに答えている。

優勝候補かなんか知らんけど、終わってもた人らに長々と聞いてどうするん。
強いとこに勝ったんなら、そのもっとすごいチーム褒めることに尽力せえよ。

インタビュアーに多少の怒りを滲ませながら、ダウンしてる選手の横で荷物を片付ける。




もしかしてもう、明日から体育館に走ることは無い?

ボールの気圧が気になることも、雨やとフロアが滑らんくなるのを気にすることももう無い?

侑に怒鳴ることも、治を褒めることも、ドリンクを作ることも、テーピングをすることももう何もかも無い?


じわじわと現実が襲ってくる。

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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時

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