稲荷崎のオトン【ハイキュー!!】

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年明けから指を折って数えて、もう今日が兵庫を立つ日。
明日には春高が開幕する。


学校について、バスがあって、信介がいて、ああ自分落ち着いてないなって気づく。
このバスに乗ったら、もう春高。そんな気さえする。

「信介」
「A、おはよう」

信じられないくらいいつも通りの信介だけがそこにいた。

「なあ信介、ごめん、ちょっとだけ、手握ってくれへんか」
「ん」

私がそう言って両手を差し出すと、私のより一回りくらい大きい信介のそれが、ぎゅうと包んだ。

「……緊張してるんやな」
「うん、そやねん、なんか落ち着けへん」

まだ私たち以外他に誰も来ない。


「大丈夫や。やってきたことは裏切らへん」

勝っても負けてもやってきたことは変わらない。
結果は副産物でしかない。

信介のその言葉にはそんな意味があった。

きっと双子なんかは特に、負けたら意味ないって言うんやろうな。
やってきても裏切られることだってあるって、そう言うんやろうな。

昔の私ならそう思ってたかもしれん。
でも今は、信介のおかげで結果は所詮副産物でしかないと思える。

こんだけ必死に3年間やってきて、そのこと自体に意味が無いわけが無い。


「……よし、ありがとう」
「落ち着いたか」


久しぶりに信介がそういうのを聞いた気がした。
色々経て、私もまた強くなれただろうか。

でもそれも所詮結果なのだろう。
やれることは全てやった。
あとは、神のみぞ知る。

「がんばるで」
「せやな」




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試合開始のホイッスルが鳴る。

正真正銘、高校最後の大会が幕を開けた。




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