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side A


今までで1番嬉しい春高出場が決まって、これからやって時に、私はショックなことを知ってしまった。



「今から言うんやろ?頑張りな!」
「北くんすごいもんなぁ」
「来てくれやるかなぁ」
「もう言うたんやろ?どもないて!」
「ほら頑張れ!」


信介が行かへんわけないやろ。
そんなことする男ちゃうし。

心のうちでまたか、と思いつつマウントをとるように悪態をついた。

「あ、あの子言わんのやな」
「誰なん?」

横にいた友達も会話を聞いていたらしく、自然とその話になる。

可愛くて、小さくて、ふわふわした子。
いかにも男子が好きそうな、そんな子だった。

「北と同じクラスの子やで。なんやようベタベタしてやるらしいわ。みんな付き合うやろ言うてる」


その言葉を聞いた瞬間、心臓がドクンと嫌な音を立てた。
瞬きをすることも、息をすることさえも忘れてしまいそうだった。
世界が色をなくすような、そんな感じがした。


嫌。


その1文字が脳内を支配する。

どうしよう。どうしようどうしよう。

頭が上手く回らなくて、考えるよりも先に私は動き出していた。

「え、ちょ、どこ行くん!」





走って走って、ひたすら足を動かした。
「あっ侑!」
廊下でたまたま見つけた侑に声をかける。

侑が言うには、信介は中庭に行ったらしい。


泣きそうになった。
まだ何もわかってないのに、泣きそうになっていた。



外に出るところで、さっきの女子とすれ違った。
ああ、もう言ったんだ。

涙が一筋頬を伝った。


外は思っていたよりも寒かった。
でもそんなことも気にせず信介のもとへ走る。


「信介、いた……」


私の声に振り向いた信介は全く持っていつも通りだった。

「なんや急いで」
「また呼ばれてるって、聞いて、……付き合ったん?」

そう尋ねて私は下を向いた。信介の顔を見れる気がしなかった。
だって、肯定されたらどんな顔をしたらいいのかわからない。









「……付き合ってへんよ」



信介がそう言ってほっとした。
目にたまる涙も引っ込んだ。

それもつかの間。


「付き合わへんよ、誰とも」


それを聞いても、引っ込んだ涙はもう出てこなかった。
呆然として言葉も出ない。


まだ何も、私は何も伝えていないのに、振られてしまった気分だった。
否、振られたのだろう。



「もうすぐ春高やし」
「……うん」


そんな言葉にはもう意味は無いように聞こえていた。

悲しいも悔しいも不甲斐ないも何もかもわからへん。

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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時

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